2001新潟大学「国際私法」シラバス

(1)        教員紹介

氏名:道垣内 正人(どうがうち・まさと)

研究テーマ:

国際私法・国際民事手続法・国際取引法。特に、最近は、インターネット時代における国際裁判管轄・準拠法決定の問題や、知的財産権・国際商事仲裁などの研究が多い。

主な業績:

     『自分で考えるちょっと違った法学入門』(有斐閣)[1993](新版[1998])

     『国際私法入門(第4版)(有斐閣)(澤木敬郎氏と共著)[1996](民事訴訟法改正に伴う第4版補訂版[1998])(法例改正等に伴う第4版再訂版[2000])

     『法からみる国際関係』(放送大学教育振興会)(筒井若水氏と分担執筆)[1998]

     『国際法辞典』(有斐閣)(筒井若水・小寺彰両氏と共編著)[1998]

     『ポイント国際私法・総論』(有斐閣)[1999]

     『ポイント国際私法・各論』(有斐閣)[2000]

(2)        講義概要

@     科目名:集中講義(9月)(2単位)

A     講義概要:

国際化の進展に伴って、国境を越えた法律問題が多発している。しかし、地球上には国境で仕切られた200以上の国があり、それぞれの法律の内容は異なっている。法統一は限られた分野でしかできていないため、一般には、いずれの国の法律を適用するかを定める国際私法ルールによって法秩序に安定を与えるという方法が採用されている。国際的な結婚・離婚、不法行為、物権問題などそれぞれの「単位法律関係」について、当事者の国籍・常居所、原因事実発生地、目的物所在地などを「連結点」として、「準拠法」を定めるのである。講義では、様々な例を挙げながら、国際私法における準拠法の決定適用プロセスについて講義する。

B     講義スケジュール:

1.統一法と国際私法

2.国際私法の発想

3.国際私法の性質(間接規範性)

4.準拠法決定適用プロセスの概略

5.単位法律関係と連結点

6.国際私法の歴史

7.法律関係の性質決定:準拠法決定適用プロセスの第1

8.先決問題と適応問題

9.連結点の確定:準拠法決定適用プロセスの第2

10.準拠法の特定(不統一法国の扱いと反致):準拠法決定適用プロセスの第3

11.準拠法の適用(外国法不明の場合と公序則):準拠法決定適用プロセスの第4

12.まとめ

C     教科書・参考書:

・道垣内正人『ポイント国際私法・総論』(有斐閣)[1999]

講義では、これを中心とし、同『ポイント国際私法・各論』(有斐閣)[2000]の内容も適宜盛り込みながら進める。なお、国際私法全体についてコンパクトにまとめたものとして、澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門(第4版再訂版)(有斐閣) [2000])がある。

D     注意事項:

国際私法は国内法であるので、『六法』を必ず持参すること。国際法の条約集は不要。

E     履修対象学年・他学部生聴講の可否:

特に特定はしないが、民法等の講義は前提として聴いておいた方がよい。他学部生の聴講も許可する。

F     成績評価の方法・基準及びこれまでの試験問題例:

成績評価は通常の試験による。

これまでの試験例として、他大学で出題したものであるが、下記のようなものが参考になるかもしれない。

・「次の文章の[A]から[F]にあてはまる単語を、解答用紙に「A= - - - 」とわかりやすく並べて記載しなさい。なお、Bは、「 - - - 説」又は「 - - - 理論」である。D、Fは複数回登場している。

現代の国際私法の基礎を作ったのは、19世紀のドイツの法学者である[A](1779-1861)である。彼の主著である『現代ローマ法体系』の第8巻において、国際私法を取り上げ、それまでの国家主権の対立の解決という見方を変え、私人の私法的法律関係の安定的処理という見方を提示した。具体的には、ルネサンス期以来の[B]にみられる法律からスタートするアプローチではなく、事実関係の「故郷」としての準拠法の決定という考え方を示したのである。

この考え方に立脚する現在の国際私法の方法は、次の4つのプロセスに分けることができる。第1のプロセスは、法律関係の[C]である。このプロセスにおいては、事実関係にいかなる単位法律関係に該当する法的問題があるかが判断される。第2のプロセスは、[D]の確定である。ここでは、たとえば、[D]とされた国籍が具体的にはどの国か、不法行為地がどの国かを検討する。第3のプロセスは、準拠法の特定である。ここでは、[D]が国籍である場合であって、その国が不統一法国であるときの処理や、準拠法所属国の国際私法規定の適用を問題とする[E]の成否などがチェックされる。そして、第4のプロセスである準拠法の適用の段階において、準拠外国法の内容の確定や、[F]の発動などが検討される。[F]による留保があるからこそ、「暗闇への跳躍」ともいうべき準拠法決定プロセスを可能とするともいえるが、この濫用は国際私法による処理自体を否定しかねない危険性もはらんでいる。」

・「法例26条により相続について当事者の本国法によるべき場合、同法28条3項と32条の適用について論じなさい。」

・「次のうちから2つを選んで、説明しなさい。      

(1)法例に規定されていない単位法律関係

(2)連結政策

(3)セーフガード条項

(4)担保物権の準拠法」