2003.4.25国際民訴(道垣内)資料2
5.国際裁判管轄
(1) 財産関係事件
(「国際的裁判管轄権」新堂幸司・小島武司編『注釈民事訴訟法第1巻』(有斐閣)86-143頁[1991]、「立法論としての国際裁判管轄」国際法外交雑誌91巻2号1-29頁[1992])
二重機能説
逆推知説
条理説----------- 管轄配分説(国際裁判管轄独自説)
利益衡量説
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「最判昭和56年10月16日民集35巻7号1224頁(マレーシア航空事件)」(法協105巻7号76頁)
「思うに、本来国の裁判権はその主権の一作用としてされるものであり、裁判権の及ぶ範囲は原則として主権の及ぶ範囲と同一であるから、被告が外国に本店を有する外国法人である場合はその法人が進んで服する場合のほか日本の裁判権は及ばないのが原則である。しかしながら、その例外として、わが国の領土の一部である土地に関する事件その他被告がわが国となんらかの法的関連を有する事件については、被告の国籍、所在のいかんを問わず、その者をわが国の裁判権に服させるのを相当とする場合のあることをも否定し難いところである。そして、この例外的扱いの範囲については、この点に関する国際裁判管轄を直接規定する法規もなく、また、よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則もいまだ確立していない現状のもとにおいては、当事者の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理にしたがって、決定するのが相当であり、わが民訴法の国内の土地管轄に関する規定、たとえば、被告の居所(民訴法二条)、法人その他の団体の事務所又は営業所(同四条)、義務履行地(同五条)、被告の財産所在地(同八条)、不法行為地(同一五条)、その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあるときは、これらに関する訴訟につき、被告をわが国の裁判権に服させるのが右条理に適うものというべきである」
<下級審裁判例による「特段の事情」による調整>
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東京地判昭和57年9月27日(ジュリ808号108頁)
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東京地判昭和59年2月15日(ジュリ843号134頁)
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東京地判昭和59年3月27日(判評310号41頁)
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東京地判昭和61年6月20日(ジュリ867号68頁)
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東京地判平成元年6月19日ジュリ956号125頁)
<最高裁による「特段の事情」論の採用>
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最判平成9年11月11日民集51巻10号4055頁(ジュリ1133号213頁)
なお、最近のものとして、
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最判平成13年6月8日民集55巻4号727号(平成13年度重要判例解説(松岡))
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ドイツ: 二重機能説
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フランス: 民法14条・15条
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アメリカ: International Shoe Co. v. State
of
U.S.CONST.amend.XIV, sec.1: “(N)or shall any State deprive any person of life,
liability, or property, without due process of law”のもとで、
“Due
process requires only that in order to subject a defendant to a judgment in personam,
if he be not present within the territory of the forum, he have certain minimum
contacts with it such that the maintenance of the suit dose not offend ‘traditional
notions of fair play and substantial justice.’”(
>その結果、拡大方向へ:Long arm statutes (New York, C.P.L.R. sec.302: 列挙型、Cal.Civ.Proc.Code sec.410.10: 憲法枠型)
>他方、縮小方向への抑制原理として、forum non conveniensの法理(Gulf Oil Corp. v.
Gilbert, 330 U.S.501(1947))
cf: NYのGeneral Obligations
Law, Secs.5-1401,5-1402.
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ブラッセル条約(1968年、その後、ECの拡大に伴って改正)(現在、EU14ヵ国ではブラッセル規則となっている)・ルガノ条約(1988年)
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ハーグ国際私法会議のミックス条約プロジェクト
(「国際裁判管轄および外国判決承認執行条約案の検討―ハーグ国際私法会議2000年条約案の意義と問題点(1)-(3)」NBL675号12-19頁、676号34-41頁、679号44-46頁[1999]、「ハーグ裁判管轄外国判決条約案の修正作業―外交会議の延期と打開策の模索」ジュリスト1194号72-81頁(2001)等)
(2) 家族事件
(i) 離婚事件
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最判昭和39年3月25日民集18巻3号486頁
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「離婚事件の国際的裁判管轄権―その新たなルール化をめざして」法律のひろば39巻11号13-24頁[1986]
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最判平成8年6月24日民集50巻7号1451頁(ジュリ1120号132頁)
「管轄の有無の判断に当たっては、応訴を余儀なくされることによる被告の不利益に配慮すべきことはもちろんであるが、他方、原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度をも考慮し、離婚を求める原告の権利の保護に欠けることがないよう留意しなければならない。」
「これを本件についてみると、前記事実関係によれば、ドイツ連邦共和国においては、・・・判決の確定により離婚の効力が生じ、XとYとの婚姻は既に終了したとされている(記録によれば、Yは、離婚により旧姓に復している事実が認められる。)が、我が国においては、右判決は民訴法二〇〇条二号の要件を欠くためその効力を認めることができず、婚姻はいまだ終了していないといわざるを得ない。このような状況の下では、仮にXがドイツ連邦共和国に離婚請求訴訟を提起しても、既に婚姻が終了していることを理由として訴えが不適法とされる可能性が高く、Xにとっては、我が国に離婚請求訴訟を提起する以外に方法はないと考えられるのであり、右の事情を考慮すると、本件離婚請求訴訟につき我が国の国際裁判管轄を肯定することは条理にかなうというべきである。」
(ii) 親子関係事件
子の利益の考慮