2003.5.9国際民訴(道垣内)資料3

国際裁判管轄(補遺)

合意管轄

最判昭和50年11月28日民集29巻10号1554頁

「少なくとも当事者の一方が作成した書面に特定国の裁判所が明示的に指定されていて、当事者間における合意の存在と内容が明白であれば足りる」

外国裁判所の専属管轄合意は、「(イ)当該事件がわが国の裁判権に専属的に服するものではなく、(ロ)指定された外国の裁判所が、その外国法上、当該事件につき管轄権を有すること」の2要件を満たせば原則として有効である。

 

6.訴訟手続上の諸問題

(1) 当事者

当事者能力:民訴法28条・29条、法例3条

訴訟能力:同条+民訴法33条

当事者適格

裁判例:東京地判平成3年8月27日判時1425号100頁(損害保険百選(第2版)200頁)

(2) 送達

日本から外国へ:民訴法108条、112条2項(民訴規則46条2項)

外国から日本へ:外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法

「民事訴訟手続に関する条約」(1954年署名・1957年発効)(1970年日本批准)

そのI(送達)の部分の改正条約:「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」(送達条約)(1965年署名・1969年発効)(1970年日本批准)

そのII(証拠調べ)の部分の改正条約:「民事又は商事に関する外国における証拠の収集に関する条約」(証拠収集条約)(1970年署名・1972年発効)(日本未批准)

そのIIIからVI(訴訟費用の担保・訴訟救助等)の改正条約:「裁判所の国際的利用に関する条約」(アクセス条約)(1980年署名、1988年発効)(日本未批准)

・送達条約の排他性:Volkswagenwerk AG v. Schlunk, 108 S.Ct.2104(1988)

  条約1条:「この条約は、「民事又は商事に関し、外国における送達及び告知のため裁判上又は裁判外の文書を外国に転達すべき場合につき、常に適用する。」

・送達条約10条(a)の留保と外国判決の承認執行:

  条約10条:「この条約は、名あて国が拒否を宣言しない限り、次の権能の行使を妨げるものではない。 (a)外国にいる者に対して直接に裁判上の文書を郵送する(to send judicial documents, by postal channels)権能 [(b)以下略]」(他の箇所はすべて”service”)

  東京地判昭和63年11月11日(判時1315号96頁)(判例評論371号203頁)

  東京地判平成2年3月26日(金融商事判例857号39頁)

  道垣内・民事訴訟雑誌40号202頁(1994)

(3) 証拠調べ

日本から外国へ:民訴法184条(なお、日米領事条約(1964)17条)、190条の域外適用の可否(192条により過料)、220条は?(外国にある文書の提出を命じた裁判例あり)

外国から日本へ:外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法

アメリカのディスカバリー:

証拠収集条約の排他性:否定(Societe Nationale industrielle Aerospatiale v. U.S. District Court, 107 S.Ct.2542(1987))

(4) その他

訴訟費用の担保:民訴法75条

通訳・翻訳:裁判所法74条、民訴法154条+刑法171条、民訴規則138条

外国公文書の認証を不要とする条約(1961年署名、1965年発効)(1970年日本批准)

訴訟行為の追完:民訴法95条