授業科目名
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国際取引法総合
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担当者名
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道垣内 正人
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単位数
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2 単位
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配当年次
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2・3
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学期
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秋
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1.授業の目的と到達目標
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「国際私法」と「国際商取引法」の全体の体系的理解と最新の問題を含む個別の法的問題に対する的確な処理を可能とする応用力をつけることを目的とする。
到達目標は、刻々と変化する国際取引をめぐる経済的社会的必要性に対応して発生する法的諸問題について、従来の枠組みの中にしかるべくそれを位置づけ、そこから導かれる諸論点を踏まえたあるべき解を見出すとともに、できれば、そこからさらに一段の法的思考をこらし、枠組み自体についての見直しについて方向性を積極的に提言することができる能力を養うことである。
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2.関連する科目との関係
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「国際私法」と「国際商取引法」に密接に関連する。したがって、できればこれらの科目の履修を選考させることが望ましいが、必ずしもそれは必須のことではなく、講義ではそれらの未修者にも配慮する。
その他、「国際民事訴訟法」、「国際租税法」、「国際経済法」、「International Dispute Resolution(国際民事訴訟、ADR)」、「国際知的財産のライセンス契約」などと深く関連する。
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3.授業の方法
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講義形式で行う。ただし、質疑応答も適宜取り混ぜ、受講者の理解度を把握し、また、受講者の関心のありようにも配慮したい。
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4.成績評価
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期末試験による成績による。
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5.教材
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テキスト:櫻田嘉章・道垣内正人編『ロースクール国際私法・国際民事手続法』(有斐閣)
参考書:澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門(第5版)(有斐閣)、道垣内正人『ポイント国際私法総論』・同各論(有斐閣)、道垣内正人『ポイント国際私法各論』(有斐閣)、高桑昭・道垣内正人『国際民事訴訟法(財産法関係)(青林書院)。
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6.授業内容 (細 目)
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第1回
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国際取引をめぐる法環境:
対象分野の全体像を把握するため、国際取引に関する国際公法的枠組みとしてのWTO・IMF体制、各国の公法的規制としての輸出入管理・為替管理・競争法・証券取引法等とその域外適用、私法の適用関係、様々な紛争解決制度について概観する。
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第2回
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公法の域外適用:
主としてアメリカの反トラスト法、輸出管理法、証券取引法等の域外適用をめぐる紛争事例を通じて、一国の法の域外適用することの必要性とその問題点を検討する。
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第3回
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私法の適用関係についての総論:
各国の私法の適用関係について、国際私法による準拠法決定適用の方法の全体像を講義する。法律関係の性質決定、連結点の確定、準拠法の特定、準拠法の適用という4段階の仕組みがポイントとなる。
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第4回
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契約の準拠法:
国際売買、国際運送、国際融資、国際投資その他様々な国際取引に関する契約について、その準拠法の決定適用、絶対的強行法規の介入等を理論的に把握した上で、具体的な紛争事例について検討する。
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第5回
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不法行為の準拠法:
製造物責任、航空機事故その他、企業の責任が問われる類型の不法行為について、その準拠法の決定適用について理論的に把握した上で、具体的な紛争事例について検討する。インターネットを通じた不法行為といった新しい状況についても考える。
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第6回
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債権譲渡、債権者代位権、相殺等の準拠法:
国際化の進展の中での債権の流動化をめぐって、債権譲渡や相殺についての準拠法が重要な関心事項となっている。これらの債権債務関係の準拠法のあり方についての理論的問題状況を把握した上で、具体的な紛争事例について検討する。
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第7回
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物権、担保物権の準拠法:
輸入された中古の外国製自動車が実は盗難車であった場合の購入者と元の所有者との争い、船舶をめぐる抵当権者と先取特権者との争い等の問題を理論的に整理するとともに、寄託された有価証券を対象とする担保物権の効力の準拠法といった現代的な問題についても検討する。
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第8回
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国際会社法:
日本で活動しているケイマン法人の法人格はどのように扱われるのか、日本の会社法の規定(たとえば社債管理会社に関する規定)の国際的適用範囲はどうなのか、日本法人と外国法人は合併することができるか、法人格否認についての準拠法はどう考えるのか、といった問題を扱う。
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第9回
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国際知的財産法:
特許権、商標権、著作権等の準拠法と紛争の場合の裁判管轄権について講義する。日本で製造された製品のアメリカへの輸出をアメリカ特許権に基づいて差止めることを日本の裁判所に求めることができるか、インターネットを通じた著作権侵害の場合、どの国の法律によってそれを判断するかといった実例を用いて問題の本質を考える。
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第10回
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訴訟による紛争解決(1):
国際取引をめぐる企業間紛争をいずれかの国の裁判所で解決をする場合の問題点を講義する。その中でも、争いが頻発している裁判権と国際裁判管轄に関するルールを、日本企業にとって関心を持たざるを得ないアメリカの国際裁判管轄ルールとの対比を通じて講義する。
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第11回
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訴訟による紛争解決(2):
国際民事訴訟法のうち、国際的訴訟競合、送達、証拠調べ、外国判決の承認執行、保全訴訟等について講義する。特に、国際訴訟競合は、訴訟戦術として用いられる場合もあり、その現実とあるべき姿のギャップを理解することは重要である。
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第12回
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国際仲裁法:
訴訟による紛争解決に対して、仲裁による紛争解決は、様々なメリットを有するため、利用されることが多い。仲裁契約・仲裁手続・本案判断それぞれの準拠法を講義し、国際商事仲裁における仲裁地の意義、国家法秩序との関係についての理解を深める。
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第13回
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国際倒産法:
国境を越えてビジネスを展開していた企業の倒産の場合、複数の国で倒産手続がおこなわれる場合もあり、その間の調整が問題となる。日本は比較的最近、国際倒産法の分野について全面的な法改正を行ったので、その内容と具体例を講義する。
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第14回
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まとめと全体についての討議:
講義全体を振り返り、国際取引をめぐる法の現状とその問題点を整理し、かつ、将来のあるべき方向について議論する。
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第15回
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試験
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