2005年度後期早稲田LS「国際民事訴訟法」
担当:道垣内正人
<概要>
国際民商事紛争の処理手続について講義する。たとえば、アメリカから日本に輸出された製品の欠陥が原因と思われる事故が発生した場合に生ずる次のような問題を対象とする。すなわち、被害者はどの国の裁判所に訴訟を提起できるのか、日本での訴訟の場合、外国への送達や外国での証拠調べなどの局面でどのような問題があるのか、日本で判決が下された場合、その効力はアメリカではどのように扱われるのか、そもそも訴訟以外の紛争解決手段はあるか、加害者であるアメリカ企業が倒産してしまった場合、倒産手続においてその企業の海外資産や日本の債権者はどのように扱われるのか、などの問題である。
講義においては、できるだけ、体系的な理解が可能なように配慮するが、他方、できるだけ具体的な事例を用いて、現実の紛争処理についても触れることができるようにしたい。
<講義の内容と進行>
講義は大きく3つの部分に分かれる。
第1は、訴訟による紛争解決である。具体的には、裁判権と国際裁判管轄、当事者・送達・証拠調べ等の手続上の諸問題、外国判決の承認・執行、国際訴訟競合、渉外保全処分などが主たるテーマとなる。
第2は、仲裁による紛争解決である。国際商事仲裁については別の講義が用意されているので、概略の講義にとどめる。なお、調停による紛争解決についても触れる。
第3は、国際倒産である。倒産管轄、外国倒産手続の承認、並行倒産、破産実体法上の諸問題についての準拠法などが主たるテーマとなる。
第1講 国際民事訴訟法の全体像
第2講 国家管轄権理論と裁判権
第3講 国際裁判管轄総論
第4講 国際裁判管轄各論(財産事件)
第5講 国際裁判管轄各論(家族事件)
第6講 国際裁判管轄に関する比較法(特にアメリカ法)及び条約等による立法論
第7講 当事者、送達
第8講 証拠調べ、その他の手続上問題
第9講 外国判決の承認執行(要件)
第10講 外国判決の承認執行(要件の続き、効果)
第11講 国際的訴訟競合と判決の抵触
第12講 渉外保全処分
第13講 国際商事仲裁・国際商事調停
第14講 国際倒産
第15講 国際倒産
<他の授業との関連>
「国際私法」及び「民事訴訟法」についての基礎的素養があることが望ましい。
<教科書・参考書>
・教科書: 櫻田嘉章・道垣内正人『ロースクール国際私法・国際民事手続法』(有斐閣、2005出版予定)の後半部分
高桑昭・道垣内正人編『国際民事訴訟法(財産法関係)』(青林書院、2002)
・参考書: 国際私法判例百選(有斐閣、2004)
国際私法の争点(新版)(有斐閣、1996)
その他、適宜、資料を配付する。
<成績評価方法>
成績評価は、講義終了後に行う筆記試験による。
<受講要件>
特になし。
<受講者への要望>
「国際私法」を受講していない場合には、少なくとも本講義と並行して受講することが望ましい。