国際私法II(学部向け・2006年度後期・水曜日2限)

 

講義概要:

 国際私法I の準拠法決定・適用プロセスに関する国際私法総論の講義に引き続き、国際私法各論として、婚姻、親子等の家族法分野における個々の問題の準拠法決定ルールと、契約、不法行為、債権譲渡などの財産関係の分野における個々の問題の準拠法決定ルールとを扱う。もっとも、復習をかねて、また国際私法Iを受講していない者のためにも、国際私法総論のポイントは押さえた上で各論に入ることとする。
 できるだけ、具体的な裁判例等を用いて、問題の所在が明確に分かった上で、それぞれの問題のポイントを講義する。契約の準拠法について、法例7条1項では当事者が準拠法を定めることができるとされているが、現実の契約実務ではどのような条項がおかれているのか、どのような条項がトラブルを生じさせているのかといった分析を通じて、予防法学的な観点も取り入れていきたい。
 また、現在、国際私法の改正が進んでいるので、適宜、新しい立法の方向についても触れる。たとえば、法例12条は、債権譲渡の第三者に対する効力は債務者の住所地法によると定めているが、債権流動化のスキームにおいて、一括上との対象とされる債権の債務者の住所地が異なる国に存在する場合には、このルールの下では対第三者対抗要件についてそれぞれの住所地法が適用されることになってしまうがそれでもよいか、困るとすればどのような立法が考えられるか、さらに、債権質、相殺等の問題との関連をどう考えるか等は重要な問題となっている。

 

教科書:

 道垣内正人『ポイント国際私法・各論』(有斐閣、2000年)

 

参考書:

 『国際私法判例百選』(有斐閣、2004年)、澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門〔第5版〕』(有斐閣、2004年)、山田鐐一『国際私法』(有斐閣、2003年)

 

備考:

 国際私法は国内法であるので、『六法』を必ず持参すること。
 国際私法Iで国際私法の考え方を講義するので、できる限り、I を受講した上でII を受講することが望ましい。
 国際私法を理解するには民法・商法の理解が前提となるが、必ずしもこれらの科目を完全にはマスターしていない受講者もいることを予期して、必要な限度でそれらの科目の基礎的なことは確認しつつ講義を進めることとする。国際民事訴訟法、国際取引法との関連が深い。国際法とは関連する論点は殆どない。