2006年6月実施
道垣内正人担当
国際取引法(成績評価の道垣内担当分である50%分の試験問題)
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法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。)が施行されていると仮定します。http://www.moj.go.jp/ の「法案・法令」の項の「第164回国会(常会)」の項参照。
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参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。
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6月10日正午までに、答案を添付したe-mailを下記あてに送付してください。
[email protected]
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A国で農場を経営するA国法人Y1のは農産品Qを生産して、B国に本店を置くB国法人Y2に納品し、Y2はQを原料として製品Rを製造・販売している。Y2がRの販売先国としているのは、日本とC国であり、それぞれの言語によるパッケージに入れているほか、市場特性の違いから、日本向けには薄味の加工をし、C国向けには濃味の加工をしている。Y2からの直接の販売先は日本、BC国のそれぞれ国内商社であるが、Y2は消費者向けの宣伝活動に力を入れ、「Y2のR」というブランドがある程度確立している。なお、「R」は日本では日本語で、C国ではC国語で表記され、発音されている。
ところが、2005年12月に出荷したRの原料であるQの残留農薬が原因となって、日本においてRを食べたX1-X200の200名が、BC国においてRを食べたX201-X300の100名がそれぞれ胃腸炎を発症し、死者は出なかったものの、それぞれ1週間程度の入院をする事態となった。
また、直接の販売先国ではないD国においても、D国においても、日本からの旅行者のおみやげとしてもらった「YのR」を食べたX301が、同様の症状で入院した。
そこで、X1-X301の計301名は原告団を結成し、Y1及びY2に対する損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。
問題1
東京地裁は、この訴訟について国際裁判管轄を有するか。必要があれば、被告別に、原告別に、又はその他の基準により、場合分けをして答えなさい。
問題2
東京地裁で裁判が行われる場合、通則法のもとでXらの請求に適用される準拠法は何か。必要があれば、被告別に、原告別に、又はその他の基準により、場合分けをして答えなさい。
問題3
Xらによる東京地裁への提訴後、XらとY1及びY2との間で話し合いがもたれ、本件の損害賠償請求の準拠法をすべてA国法とすることと引き替えに、Xらは訴えを取り下げ、日本を仲裁地とする仲裁によって本件紛争を解決する旨の合意がなされた。そして、それに従って、訴えが取り下げられ、日本での仲裁が行われた。
1年後に仲裁判断が下されたところ、A国法上、Y1及びY2の責任を認めるために必要とされる過失の立証ができていないとの理由でXらの請求は退けられてしまった。これに対し、Xらは、日本の製造物責任法が適用されれば瑕疵は認められたはずであり、準拠法をA国法にしたことは重大な事実誤認に基づく錯誤であって、準拠法の変更合意は無効であり、日本法を適用すべき事案であり、Xらの請求を退けた仲裁判断は取り消されるべきである旨の主張をし、仲裁判断取消の訴えを東京地裁に提起した。この主張は認められるか。