「国際民事訴訟法 3年後期 2単位 道垣内正人

<概要>

国際民商事紛争の処理手続について講義する。たとえば、アメリカから日本に輸出された製品の欠陥が原因と思われる事故が発生した場合に生ずる次のような問題を対象とする。すなわち、被害者はどの国の裁判所に訴訟を提起できるのか、日本での訴訟の場合、外国への送達や外国での証拠調べなどの局面でどのような問題があるのか、日本で判決が下された場合、その効力はアメリカではどのように扱われるのか、そもそも訴訟以外の紛争解決手段はあるか、加害者であるアメリカ企業が倒産してしまった場合、倒産手続においてその企業の海外資産や日本の債権者はどのように扱われるのか、などの問題である。

 講義においては、できるだけ、体系的な理解が可能なように配慮するが、他方、できるだけ具体的な事例を用いて、現実の紛争処理についても触れることができるようにしたい。

<講義の内容と進行>

講義は大きく3つの部分に分かれる。

1は、訴訟による紛争解決である。具体的には、裁判権と国際裁判管轄、当事者・送達・証拠調べ等の手続上の諸問題、外国判決の承認・執行、国際訴訟競合、渉外保全処分などが主たるテーマとなる。

2は、仲裁による紛争解決である。国際商事仲裁については別の講義が用意されているので、概略の講義にとどめる。なお、調停による紛争解決についても触れる。

第3は、国際倒産である。倒産管轄、外国倒産手続の承認、並行倒産、破産実体法上の諸問題についての準拠法などが主たるテーマとなる。

第1回         国際民事訴訟法の全体像

第2回         国家管轄権理論と裁判権(UNIT 21)

第3         国際裁判管轄総論(UNIT 22)

第4         国際裁判管轄各論(財産事件) (UNIT 23)

第5回         国際裁判管轄各論(財産事件)(つづき)

第6         国際裁判管轄各論(家族事件)(UNIT 24)

第7回         当事者、送達・証拠調べ(UNIT 25-26)

第8回         当事者、送達・証拠調べ(つづき)

第9回         外国判決の承認執行(UNIT 27)

第10回       外国判決の承認執行(つづき)

第11回       国際的訴訟競合と判決の抵触(UNIT 28)

第12回       外国法の適用・渉外保全処分(UNIT 29-30)

第13回       国際商事仲裁 (UNIT 31)

第14回       国際倒産(UNIT 32)

第15回       まとめ

UNIT」はすべて下記の『ロースクール国際私法・国際民事手続法』のUNITである。

<他の授業との関連>

 「国際私法I」、「国際私法II」及び「民事訴訟法」についての基礎的素養があることが望ましい。

<教科書・参考書>

・教科書櫻田嘉章・道垣内正人『ロースクール国際私法・国際民事手続法(第2版)』(有斐閣、2007)、高桑昭・道垣内正人編『国際民事訴訟法(財産法関係)(青林書院、2002)

・参考書:国際私法判例百選(新法対応補正版)(有斐閣、2007)

<成績評価方法>

成績評価は、筆記試験による。

インターネットを介して持ち帰り試験を行う予定である。

<受講要件>

 なし。

<受講者への要望>

  講義においてはソクラティック・メソッドをできるだけ用いるので、質疑応答、議論ができるような事前の準備が求められる。