2007年秋学期

道垣内正人

 

国際関係私法基礎2007テスト(50%)

 

-      著書・論文の渉猟その他の調査を行うことは自由ですが、この問題について他人の見解を求めて相談すること及び他人の見解を参考にしたり、それに従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、20071125()正午です。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。

-      メールの件名は、必ず、「国際関係私法基礎2007」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの設定とすること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際関係私法2007」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント又は11ポイントの読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。ただ、問題1については、あなたが法律事務所のアソシエイトであり、パートナーからメモの作成を依頼されたと想定して、不必要に長くなく、内容的に十分なもの(法令・判例・学説の適度な引用を含む。)が期待されています。

-      これは、成績評価のための筆記試験として、道垣内担当分である50%分に該当するものにするものです(50点満点)


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問題1

 

Xはドイツ人男性(40)であり、13年前にニューヨーク州法人である投資銀行Y社に入社し、3年前にそれまで10年間勤務していたロンドン支社を離れて来日し、日本支社に幹部として勤務している。Xの給与は、Y社の報酬規定に従い、その給与のほとんどは利益への寄与に応じた特別報酬金であり、年収の変動は大きいものの、1億円を越える年もあった。ところが、本年101日、Yは何らの予告もなくXe-mailで解雇する旨の通知をし、その当日、Xの有していたIDカードではオフィスへの立入りができないようにする措置をとり、後日、オフィス内のXの私物をXの自宅に送付し、解雇日までの給与の振り込みをした。

 

XY社との間の雇用契約書には次のような条項がある。

 

Article P: Any dispute arising out of or in connection with this employment contract shall be solely resolved through a legal proceeding before the courts located in the city of New York, which shall have the exclusive jurisdiction over the dispute.

 

Article Q: This employment contract is governed by the laws of New York.

 

 

Xは、本件解雇の理由はY社日本支社の活動について金融商品取引法に違反すると思われる事実をXが日本の金融庁に通報したことにあり、日本の公益通報者保護法により解雇は無効であると主張している。これに対して、Y社側は、Xの勤務成績が落ちていることに加え、最近、ある案件でY社に巨額の損失を与える取引の責任者であったことに解雇原因があり、Xの主張する金融商品取引法違反の点は、その後Y社が金融庁から何ら制裁を受けていないことから分かるように、Xの思い違いであると主張している。そして、Y社は、いずれにしても、Xに不服があれば、ニューヨークの裁判所でニューヨーク州法に基づいて争うべきである主張している。

 

ニューヨーク州法によればY社の措置は何ら違法な点はないとされることを前提とし、Xから対応策の相談を受けたとして、以下の問題についてメモを作成せよ。

 

(1) 上記のP条があっても、Xは日本の裁判所にY社を被告とする解雇無効確認の訴えを提起することができるか。(20)

 

(2) (1)について日本での裁判が可能であると仮定して、上記のQ条があっても、Xが日本法に基づく何らかの保護を求めることができるか。(20)

 

問題2

 

講義を通じて、国際私法について、なるほどと思ったこと、疑問に思うことを、それぞれ5行以内で1点ずつ書いてください。国際私法についてどこかに書いてあることを書き写すのではなく、自分で積極的に考えた結果であるか否かを採点の基準にします。(10)