国際私法I(学部向け・2007年度前期・水曜日3限)
講義概要:
国際化の進展に伴って、国境を越えた私法上の法律問題が多発している。しかし、地球上には国境で仕切られた200以上の国があり、それぞれの法律の内容は異なっている。私法の統一は限られた分野でしかできていないため、いずれの国の法律を準拠法とするかを定める国際私法ルールによって秩序を与えるという方法が採用されている。これが国際私法である。
日本では「法の適用に関する通則法」が準拠法決定ルールを定めている。たとえば、相続について、通則法36条は被相続人の本国法によると定めている。これにより、日本に財産を残して死亡したA国人の相続問題にはA国法が適用されることになる。しかし、相続問題とはいかなる範囲の問題か、被相続人が二重国籍者である場合はどうするか、アメリカのように州により法律が異なる国の国籍を有する場合には本国法はどのように特定するのかといった問題、さらには、たとえば、一夫多妻婚を認める国の法律が本国法となり、日本所在の財産について複数の妻に相続を認めることが日本の公序良俗に反する結果とはならないか、といった問題が生ずる。
国際私法Iでは、国際私法総論として、(1)法律関係の性質決定、(2)連結点の確定、(3)準拠法の特定、(4)準拠法の適用、以上4つのプロセスからなる準拠法の決定・適用プロセスを扱い、その考え方を歴史的・体系的に理解することを中心課題とする。具体例として国際家族法上の問題を主として用いることによって、抽象論にならないようにするつもりである。
教科書:
道垣内正人『ポイント国際私法・総論(第2版)』(有斐閣、2007年)
参考書:
澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門〔第6版〕』(有斐閣、2006年)、『国際私法判例百選(新法対応補正版)』(有斐閣、2007年)
備考
国際私法は国内法であるので、『六法』を必ず持参すること。
国際私法を理解するには民法・商法の理解が前提となるが、必ずしもこれらの科目を完全にはマスターしていない受講者もいることを予期して、必要な限度でそれらの科目の基礎的なことは確認しつつ講義を進めることとする。国際私法II は各論を扱う。国際民事訴訟法、国際取引法との関連が深い。国際法とは関連する論点は殆どない。