2008年秋e-mailを通じて実施

道垣内正人

 

実務国際私法I (2008)テスト

 

-         著書・論文の渉猟その他の調査を行うことは自由ですが、この問題について他人の見解を求めて相談すること及び他人の見解を参考にしたり、それに従うことは禁止します。

-         解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、20081214()正午です。

-         解答は下記の要領で作成し、[email protected]及び[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。

-         メールの件名は、必ず、「実務国際私法I(2008)テスト」として下さい(分類のためです)。

-         文書の形式は下記の通り。

A4サイズの設定とすること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「実務国際私法I(2008)テスト」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント又は11ポイントの読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-         枚数制限はありません。ただし、あなたが法律事務所のアソシエイトであり、パートナーからメモの作成を依頼されたと想定して、不必要に長くなく、内容的に十分なもの(法令・判例・学説の適度な引用を含む。)が期待されています。


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問題1

 

登場人物は以下の4名。

A:      日本・フランスの二重国籍を有する27歳女性。幼少の頃から日本在住。下記B7年前に婚姻したが、1年前に離婚し、現在、独身。離婚後、定職はなく、水商売系のアルバイトをして生活費を稼ぐ程度。

B:      日本国籍を有する30歳男性。出生以来、日本在住。Aの元夫。下記Cを自分とAとの間の子と信じていたが、Cが怪我をした際にCの血液型から自分がCの父ではあり得ないことに気づき、1年前にAと離婚。現在、独身。

C:     Aを母として出産。日本・フランスの二重国籍を有する3歳男子。

D:     アメリカ国籍を有する26歳男性。オハイオ州生まれ。大学入学までオハイオ州在住。大学4年間はカリフォルニア州在住。卒業後、直ちにニューヨーク州で起業。現在はニューヨーク州在住。起業後3年余りでビジネスは大成功し、最近、自社株のNY証券市場への上場を果たし、持ち株の一部売却により1億ドルの売却益を取得。年収500万ドル。独身。大学4年生の時、アジア各国を旅行したことがあり、日本に1週間立ち寄り、Aと両者同意のもとに1度だけ性的関係をもったことがある。

 

1ヵ月前、DAから、「CDの子であるので、扶養料を支払ってもらいたい」との連絡を受けた。それには、日本で撮影されたADの写真、そのときの記念の品、そして、Cの写真が同封されていた。Dは直ちに弁護士に対応を相談し、その弁護士からあなたに次の点について質問があった。それぞれについて日本の弁護士として日本法についてのメモランダムを作成しなさい。

 

(1)            CAを法定代理人として、Dに対して、親子関係存在確認又は認知請求、及び、扶養料請求の訴えを日本の裁判所に提起し、日本で裁判が行われることになったと仮定し、親子関係存在確認又は認知請求の準拠法はどうなるか。 (20)

 

(2)            (1)と同様の仮定のもと、扶養料請求の準拠法はどうなるか。 (20)

 

(3)            BDに対して、婚姻関係侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起し、日本で裁判が行われることになったと仮定し、この損害賠償請求の準拠法はどうなるか (20)

 

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*        上記の準拠法の決定については、法の適用に関する通則法だけではなく、扶養義務の準拠法に関する法律も存在することに注意。

**       一般に、大陸法系の法域では、婚姻外で出生した子と父との間の親子関係は認知によって成立するのに対して、英米法系の法域には認知制度はなく、事実関係に基づき親子関係の存在が判断される。上記に登場する法域もこれが該当することを前提とする。

 

 

問題2

 

Pの相続財産である日本所在の土地建物をめぐる争いについて第一審裁判所の判決が下され、その中で、準拠法の決定について次のとおり判断がされたとする。この点について、準拠法は日本法とすべきではないかとの立場から、控訴理由書をドラフトしなさい。ただし、事実認定及び言及されている内容の外国法の存在は認めることを前提とする。 (40)

 

1 法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。)第36条の規定によれば、相続準拠法は「被相続人の本国法」であるところ、Pは死亡当時ロシア連邦の国籍を有していたと認められるから、その準国際私法により、ロシア連邦内のいずれの共和国の法律によるかを定めることになる。
2
 ロシア連邦においていかなる準国際私法が行われているかは明らかでない。しかし、PQ共和国の市民権を有し、同共和国の選挙権を有していたこと及びPの最後の常居所地がQ共和国にあったことが認められることを考慮すれば、Pの属人法はQ共和国法であると考えられる。したがって、相続準拠法は、Q共和国法になる。
3
 ロシア連邦の国際私法は、動産の相続については本国法によるが、不動産の相続についてはその所在地法が適用されるものとしており、この規定は相続分割主義を採用したものと認められる。したがって、本件土地建物の相続については日本法に反致されるが(通則法第41条)、ロシア連邦の国際私法は一般に反致を認めるので、日本に上記の反致規定が存在することにより、ロシア連邦から見ればロシア連邦法によるとされていることを理由に、結局、相続準拠法はQ共和国法になる。