早稲田大学法学部2008年度後期「国際民事訴訟法II(道垣内担当)試験問題

 

ルール

 

-      参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、2009120()15:00です。21日に解説をするためです。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。

-      メールの件名は、必ず、「国際民事訴訟法II」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際民事訴訟法II」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。ただ、不必要に長くなく、内容的に十分なもの(判例・学説の適度な引用を含む。)が期待されています。

-      これは、成績評価のための筆記試験として、100%分に該当するものにするものです。

 

問題 1

 

ある外国の裁判所が日本法を適用して裁判したとする。しかし、日本から見れば、その日本法の適用は一時代前の解釈に基づくものであって、その後、判例変更があったため、その外国判決の示した解釈は正しく現在の日本法を適用したものとはいえないものであったとする。しかし、民事訴訟法118条の定める要件の中には、法が正しく適用されていることというものはなく、むしろ、民事執行法242項は、「裁判の当否を審査しないで」外国裁判所の執行をしなければならないと定めている。そうすると、日本法の適用に誤りがある外国判決であっても、日本で承認・執行することになってしまうが、それでよいか。 (40)

 

問題 2

 

 国際商事仲裁について下記の設問(1)から(3)に答えなさい。これらの設問は、それぞれ独立しており、それぞれにおける事実の記載はその設問においてのみ妥当する。(20×3=60)

 

日本法人Xとニューヨーク州法人Yとは、両者の間に契約中に、契約をめぐって紛争が発生した場合には、Xが申し立てるときはニューヨークでアメリカ仲裁協会の規則による仲裁により解決し、他方、Yが申し立てるときは東京で日本商事仲裁協会の規則による仲裁により解決する旨の条項を置いていた。以下、(1)から(3)では、東京地方裁判所がそれぞれの訴えについて国際裁判管轄を有することを前提とする。 (20×3)

 

(1)     Xは仲裁申立てをせず、Yを被告として、東京地方裁判所に本件契約違反に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。これに対して、Yはそのような請求は上記仲裁合意に基づきニューヨークでの仲裁で解決されるべきであるとし、訴え却下を求めているが、Xは、その仲裁条項は詐欺的に本件契約書中に挿入されたものであり、その効力はないと主張している。この詐欺の主張が認められるか否かにつき、東京地方裁判所はいかなる法律を適用すべきか。

(2)     本件契約はYの有するアメリカの特許をXが使用することを許諾し、Xがそのアメリカ工場で製品を生産することを内容とするライセンス契約であったとする。Xは仲裁申立てをせず、Yを被告として、東京地方裁判所にライセンス料支払義務不存在確認請求訴訟を提起した。その理由として、XYのアメリカ特許は無効であると主張している。これに対して、Yはそのような請求は上記仲裁合意に基づきニューヨークでの仲裁で解決されるべきであるとし、訴え却下を求めている。これにつき、東京地方裁判所はどのように判断すべきか。

(3)     本件契約では、契約をめぐる紛争はすべて仲裁により解決することを定め、特に、独占禁止法違反に該当するか否かも仲裁により解決することを明記している。しかし、Xは仲裁申立てをせず、Yを被告として、東京地方裁判所に本件契約中のXが日本でX製品を販売することを禁止することを定めている規定の無効確認請求訴訟を提起した。これに対して、Yはそのような請求は上記仲裁合意に基づきニューヨークでの仲裁で解決されるべきであるとし、訴え却下を求めているが、Xは、上記の契約条項はYによる不当な市場支配力行使により強要されたものであり、日本の独占禁止法違反であることを理由にその無効の確認を求めるものであって、仲裁で解決すべき問題ではないと主張している。これにつき、東京地方裁判所はどのように判断すべきか。