2008517日:(どう)垣内(がうち)正人(まさと)

「国際協力論」:外国企業を被告とする訴訟と仲裁

1. 国際訴訟

 

民事訴訟法

第四条  訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。

 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。

 ...

 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。

 外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる [以下略]

第五条  次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。

 財産権上の訴え      義務履行地

 手形又は小切手による金銭の支払の請求を目的とする訴え     手形又は小切手の支払地

 船員に対する財産権上の訴え     船舶の船籍の所在地

 日本国内に住所(法人にあっては、事務所又は営業所。以下この号において同じ。)がない者又は住所が知れない者に対する財産権上の訴え     請求若しくはその担保の目的又は差し押さえることができる被告の財産の所在地

 事務所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するもの     当該事務所又は営業所の所在地  [以下略]

 

第十七条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

第二十二条  確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する [以下略]

 

Case 1: 最高裁昭和561016日判決(民集5071451) 

 [事実] 昭和五二年十二月四日、訴外Aは、マレーシア連邦クアラ・ルンプール所在の旅行代理店を通じてY(被告・被控訴人・上告人)との間で締結したクアラ・ルンプール=ペナン間往復の国内航空運送契約に基づき、Yの航空機に搭乗してペナンからの帰路の途中、同航空機がマレーシア国内のタンジュクバンに墜落したため、死亡した。

 そこで、Aの妻子であるX1・X2・X3(原告・控訴人・被上告人。以下、Xらと略す)は、Yの運送契約上の債務不履行によりAの取得した損害賠償請求権を各自三分の一の割合により相続したとして、Yに対して各自一三三三万円の損害賠償の支払を求める訴えをXらの住所地を管轄する名古屋地裁に提起した。

 A及びXらは、日本に住所を有する日本人であり、Yは、マレーシア連邦法に準拠して設立され、同国に本店を有する外国会社であるが、日本にも乗り入れている国際線をも運行しており、東京に登記した営業所を設け、その代表者として訴外Bを定めている。

 一審は国際裁判管轄否定、二審は肯定。

[判旨] 上告棄却。 1 「思うに、本来国の裁判権はその主権の一作用としてされるものであり、裁判権の及ぶ範囲は原則として主権の及ぶ範囲と同一であるから、被告が外国に本店を有する外国法人である場合はその法人が進んで服する場合のほか日本の裁判権は及ばないのが原則である。しかしながら、その例外として、わが国の領土の一部である土地に関する事件その他被告がわが国となんらかの法的関連を有する事件については、被告の国籍、所在のいかんを問わず、その者をわが国の裁判権に服させるのを相当とする場合のあることをも否定し難いところである。そして、この例外的扱いの範囲については、この点に関する国際裁判管轄を直接規定する法規もなく、また、よるべき条約も一般に承認された明確な国際法上の原則もいまだ確立していない現状のもとにおいては、当事者の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理にしたがって、決定するのが相当であり、わが民訴法の国内の土地管轄に関する規定、たとえば、被告の居所(民訴法二条[42])、法人その他の団体の事務所又は営業所(同四条[445)、義務履行地(同五条[51])、被告の財産所在地(同八条[54])、不法行為地(同一五条[59])その他民訴法の規定する裁判籍のいずれかがわが国内にあるときは、これらに関する訴訟につき、被告をわが国の裁判権に服させるのが右条理に適うものというべきである」。

 「ところで、原審の適法に確定したところによれば、Yは、マレーシア連邦会社法に準拠して設立され、同連邦国内に本店を有する会社であるが、訴外Bを日本における代表者と定め、東京都港区新橋三丁目三番九号に営業所を有するというのであるから、たとえYが外国に本店を有する外国法人であっても、上告人をわが国の裁判権に服させるのが相当である。それゆえ、わが国の裁判所が本件の訴につき裁判権を有するとした原審の判断は、正当として是認することができ」る。

2 「上告審においては、当事者は原審が国内の任意管轄に関する規定に違背することを主張することが許されないから(民訴法三八一条、三九六条、三九五条一項三号参照)、論旨は、上告適法の理由にあたら」ない。

 

Case 2: 最高裁平成91111日判決(民集51104055) 

 [事実] 原告・控訴人・上告人Xは、日本での自動車の輸入・販売を主たる業務とする日本法人であり、被告・被控訴人・被上告人Yは、昭和40年ころからドイツ連邦共和国内に居住し、フランクフルトを本拠として営業活動を行ってきた日本人である。昭和62121日、XとYは、XがYに欧州各地からの自動車の買い付け、預託金の管理、代金の支払、車両の引取り及び船積み、市場情報の収集等の業務を委託することを内容とする契約(「本件契約」)をフランクフルトで締結した。そして、Xは、Yの求めにより、本件契約に基づく自動車の買い付けのための資金として、昭和621126日及び同年127日に、Yの指定したドイツ国内の銀行口座に合計91747138円を送金した。

 その後、Xは、次第にYによる預託金の管理に不信感を募らせ、信用状によって自動車代金の決済を行うことをYに提案し、Yに対して預託金の返還を求めた。ところが、Yがこれに応じなかったため、Xは、自己の本店所在地が右預託金返還債務の義務履行地であるとして、右預託金の残金24960081円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める本件訴訟を千葉地裁に提起した。一審、二審とも、国際裁判管轄を否定して訴え却下。

[判旨] 上告棄却。 1 「被告が我が国に住所を有しない場合であっても、我が国と法的関連を有する事件について我が国の国際裁判管轄を肯定すべき場合のあることは、否定し得ないところであるが、どのような場合に我が国の国際裁判管轄を肯定すべきかについては、国際的に承認された一般的な準則が存在せず、国際的慣習法の成熟も十分ではないため、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である(最高裁昭和55()130号同561016日第2小法廷判決・民集3571224頁、最高裁平成5()764号同8624日第2小法廷判決・民集50714513照〉。そして、我が国の民訴法の規定する裁判籍のいずれかが我が国内にあるときは、原則として、我が国の裁判所に提起された訴訟事件につき、被告を我が国の裁判権に服させるのが相当であるが、我が国で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には、我が国の国際裁判管轄を否定すべきである。

2 「これを本件についてみると、Xは、本件契約の効力についての準拠法は日本法であり、本訴請求に係る預託金返還債務の履行地は債権者が住所を有する我が国内にあるとして、義務履行地としての我が国の国際裁判管轄を肯定すべき旨を主張するが、前記事実関係によれば、本件契約は、ドイツ連邦共和国内で結結され、Yに同国内における種々の業務を委託することを目的とするものであり、本件契約において我が国内の地を債務の履行場所とすること又は準拠法を日本法とすることが明示的に合意されていたわけではないから、本件契約上の債務の履行を求める訴えが我が国の裁判所に提起されることは、Yの予測の範囲を超えるものといわざるを得ない。また、Yは、20年以上にわたり、ドイツ連邦共和国内に生活上及び営業上の本拠を置いており、Yが同国内の業者から自動車を買い付け、その代金を支払った経緯に関する書類などYの防御のための証拠方法も、同国内に集中している。他方、Xは同国から自動車等を輸入していた業者であるから、同国の裁判所に訴訟を提起させることが上告会社に過大な負担を課することになるともいえない。右の事情を考慮すれば、我が国の裁判所において本件訴訟に応訴することをYに強いることは、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念に反するものというべきであり、本件契約の効力についての準拠法が日本法であるか否かにかかわらず、本件については、我が国の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情があるということができる。したがって、本件預託金請求につき、我が国の国際裁判管轄を否定した原審の判断は、結論において是認することができ、原判決に所論の違法はない。」

 

民事訴訟法

第百十八条  外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。

 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。

 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。

 相互の保証があること。

 

民事執行法

第二十四条  外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。

 第一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第百十八条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。

 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。

 

Case 3: 最高裁平成9711日判決(民集5162573) 

 [事実]  日本法人であるY1のカリフォルニア州法人の子会社であるA(セミコンダクター製品メーカー)は、オレゴン州の開発業者との間で、同州への工場進出の仲介等を内容とする独占開発社契約を締結した。しかし、順調には進まず、開発業者の一人Mを代表者とするX(パートナーシップ)の設立、工場用地の賃貸借契約の締結などをしたが、結局、計画は中止に至った。Xらは、Aの提起した賃貸借契約無効確認等請求訴訟に対する反訴という形で、Y1、A、Aの役員Y2らに対し、不実表示による詐欺の共謀等を理由とする損害賠償等を請求した。

 カリフォルニア州裁判所は、Y1、Y2らに対し、補償的損害賠償として四二万五二五一ドル、特にY1に対してはこれに加えて、懲罰的損害賠償として一一二万五〇〇〇ドルの支払いを命じ(訴訟費用等省略)、控訴棄却の後、判決は確定した。右のうち、懲罰的損害賠償は、契約に起因しない義務の違反を理由とする訴訟において、被告に欺罔行為などがあったとされた場合、原告は、実際に生じた損害の賠償に加えて、見せしめと被告に対する制裁のための損害賠償を受けることができる旨定めるカリフォルニア州民法典三二九四条に基づくものである。

 Xがこの米国判決のわが国での執行を求めたのが本件である。

 一審は、本件外国判決を懲罰的損害賠償を命ずる部分とその他の部分とに分け、前者について、その民事判決性は肯定しながらも、民訴法二〇〇条三号の要件審査において、本件外国判決における事実認定及び法適用を洗い直した上で公序違反を認定した。

 二審は、結論は一審判決と同じであるものの、懲罰賠償部分の執行を拒否する理由として、それがわが国における民事上の不法行為に基づく損害賠償制度とは大きくかけ離れた法制度のもとでなされた裁判であり、むしろ我が国の法制度上は罰金に近い刑事法的性格を持つものとみるべきことから、わが国で承認執行の対象とされるべき民事判決(この基準は日本法による)といえるかどうか自体が疑問である上、仮にそれが民事判決に当たると解しても、わが国の法秩序のありかたからいって、その執行を認めることは公序に反すると判示した。

[判旨] 上告棄却。 1 「執行判決を求める訴えにおいては、外国裁判所の判決が民訴法二〇〇条各号に掲げる条件を具備するかどうかが審理されるが(民事執行法二四条三項)、民訴法二〇〇条三号[1183]は、外国裁判所の判決が我が国における公の秩序又は善良の風俗に反しないことを条件としている。外国裁判所の判決が我が国の採用していない制度に基づく内容を含むからといって、その一事をもって直ちに右条件を満たさないということはできないが、それが我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものと認められる場合には、その外国判決は右法条にいう公の秩序に反するというべきである。」

二 「カリフォルニア州民法典の定める懲罰的損害賠償(以下、単に「懲罰的損害賠償」という。)の制度は、悪性の強い行為をした加害者に対し、実際に生じた損害の賠償に加えて、さらに賠償金の支払を命ずることにより、加害者に制裁を加え、かつ、将来における同様の行為を抑止しようとするものであることが明らかであって、その目的からすると、むしろ我が国における罰金等の刑罰とほぼ同様の意義を有するものということができる。これに対し、我が国の不法行為に基づく損害賠償制度は、被害者に生じた現実の損害を金銭的に評価し、加害者にこれを賠償させることにより、被害者が被った不利益を補てんして、不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・民集四七巻四号三〇三九頁参照)、加害者に対する制裁や、将来における同様の行為の抑止、すなわち一般予防を目的とするものではない。もっとも、加害者に対して損害賠償義務を課することによって、結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても、それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的、副次的な効果にすぎず、加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである。我が国においては、加害者に対して制裁を科し、将来の同様の行為を抑止することは、刑事上又は行政上の制裁にゆだねられているのである。そうしてみると、不法行為の当事者間において、被害者が加害者から、実際に生じた損害の賠償に加えて、制裁及び一般予防を目的とする賠償金の支払を受け得るとすることは、右に見た我が国における不法行為に基づく損害賠償制度の基本原則ないし基本理念と相いれないものであると認められる。」

三 「したがって、本件外国判決のうち、補償的損害賠償及び訴訟費用に加えて、見せしめと制裁のために被上告会社に対し懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分は、我が国の公の秩序に反するから、その効力を有しないものとしなければならない。」

 

2. 国際仲裁

 

仲裁法

13  仲裁合意は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者が和解をすることができる民事上の紛争(離婚又は離縁の紛争を除く。)を対象とする場合に限り、その効力を有する。 [以下略]

45  仲裁判断(仲裁地が日本国内にあるかどうかを問わない。以下この章において同じ。)は、確定判決と同一の効力を有する。[以下略]

 

Case 4: 最高裁平成994日判決(民集5183657)

【事実】 1 上告人(原告・控訴人)Xは、教育関係の催事のプロデュース、外国アーティストの招へい及び一般興行等を目的とする日本法人(株式会社)であり、被上告人(被告・被控訴人)Yは、アメリカ合衆国においてサーカス興行を行う同国法人訴外Aの代表者である。XとAは、昭和62102日、Xが、昭和63年度及び平成元年度の2年間、Aのサーカス団を日本に招へいして興行する権利を取得し、Aに対してその対価を支払うとともに、Aが、右2年間、日本において、Aのサーカス団が昭和62815日にアメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴのスポーツアリーナにおいて行った公演と規模、質共に同等のサーカスを構成して興行する義務を負う旨の契約(以下「本件興行契約」という)を締結した。

 XとAは、本件興行契約締結の際、「本件興行契約の条項の解釈又は適用を含む紛争が解決できない場合は、その紛争は、当事者の書面による請求に基づき、商事紛争の仲裁に関する国際商業会議所の規則及び手続に従って仲裁に付される。Aの申し立てるすべての仲裁手続は東京で行われ、Xの申し立てるすべての仲裁手続はニューヨーク市で行われる。各当事者は、仲裁に関する自己の費用を負担する。ただし、両当事者は仲裁人の報酬と経費は等分に負担する。」旨の合意(以下「本件仲裁契約」という)をした。

 本件訴訟は、Xが、本件興行契約締結に際し、Aの代表者であるYがキャラクター商品等の販売利益の分配及び動物テント設営費用等の負担義務の履行についてXを欺罔してXに損害を被らせたと主張して、Yに対して不法行為に基づく損害賠償を求めるものである。これに対して、Yは、XとAとの間の本件仲裁契約の効力がXとYとの間の本件訴訟にも及ぶと主張して、本件訴えの却下を求めた。一・二審とも訴え却下。

【判旨】 上告棄却。 1 「本件仲裁契約においては、仲裁契約の準拠法についての明示の合意はないけれども、『Aの申し立てるすべての仲裁手続は東京で行われ、Xの申し立てるすべての仲裁手続はニューヨーク市で行われる。』旨の仲裁地についての合意がされていることなどからすれば、Xが申し立てる仲裁に関しては、その仲裁地であるニューヨーク市において適用される法律をもって仲裁契約の準拠法とする旨の黙示の合意がされたものと認めるのが相当である。」

2 「本件仲裁契約に基づきXが申し立てる仲裁について適用される法律は、アメリカ合衆国の連邦仲裁法と解されるところ、同法及びこれに関する合衆国連邦裁判所の判例の示す仲裁契約の効力の物的及び人的範囲についての解釈等に照らせば、XのYに対する本件損害賠償請求についても本件仲裁契約の効力が及ぶものと解するのが相当である。そして、当事者の申立てにより仲裁に付されるべき紛争の範囲と当事者の一方が訴訟を提起した場合に相手方が仲裁契約の存在を理由として妨訴抗弁を提出することができる紛争の範囲とは表裏一体の関係に立つべきものであるから、本件仲裁契約に基づくYの本案前の抗弁は理由があり、本件訴えは、訴えの利益を欠く不適法なものとして却下を免れない。」

 

外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(昭和36714日条約第10号)

2 1. 各締約国は、契約に基づくものであるかどうかを問わず、仲裁による解決が可能である事項に関する一定の法律関係につき、当事者の間にすでに生じているか、又は生ずることのある紛争の全部又は一部を仲裁に付託することを当事者が約した書面による合意を承認するものとする。 2. 「書面による合意」とは、契約中の仲裁条項又は仲裁の合意であって、当事者が署名したもの又は交換された書簡若しくは電報に載っているものを含むものとする。

3. 当事者がこの条にいう合意をした事項について訴えが提起されたときは、締約国の裁判所は、その合意が無効であるか、失効しているか、又は履行不能であると認める場合を除き、当事者の一方の請求により、仲裁に付託すべきことを当事者に命じなければならない。

5 1. 判断の承認及び執行は、判断が不利益に援用される当事者の請求により、承認及び執行が求められた国の権限のある機関に対しその当事者が次の証拠を提出する場合に限り、拒否することができる。

(a)

 第2条に掲げる合意の当事者が、その当事者に適用される法令により無能力者であったこと又は前記の合意が、当事者がその準拠法として指定した法令により若しくはその指定がなかったときは判断がされた国の法令により有効でないこと。

(b)

 判断が不利益に援用される当事者が、仲裁人の選定若しくは仲裁手続について適当な通告を受けなかったこと又はその他の理由により防禦することが不可能であったこと。

(c)

 判断が、仲裁付託の条項に定められていない紛争若しくはその条項の範囲内にない紛争に関するものであること又は仲裁付託の範囲をこえる事項に関する判定を含むこと。ただし、仲裁に付託された事項に関する判定が付託されなかった事項に関する判定から分離することができる場合には、仲裁に付託された事項に関する判定を含む判断の部分は、承認し、かつ、執行することができるものとする。

(d)

 仲裁機関の構成又は仲裁手続が、当事者の合意に従っていなかったこと又は、そのような合意がなかったときは、仲裁が行なわれた国の法令に従っていなかったこと。

(e)

 判断が、まだ当事者を拘束するものとなるに至っていないこと又は、その判断がされた国若しくはその判断の基礎となった法令の属する国の権限のある機関により、取り消されたか若しくは停止されたこと。

1.             仲裁判断の承認及び執行は、承認及び執行が求められた国の権限のある機関が次のことを認める場合においても、拒否することができる。

(a)

 紛争の対象である事項がその国の法令により仲裁による解決が不可能なものであること。

(b)

 判断の承認及び執行がその国の公の秩序に反すること。