2009年度早稲田「国際民事訴訟法」(50%分)試験問題
ルール
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参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。
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解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、2009年6月8日(月)9:00です。
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解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。氏・名の間はアンダーバーです。
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メールの件名は、必ず、「2009国際民事訴訟法」として下さい(分類のためです)。
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文書の形式は下記の通り。
・A4サイズの紙を設定すること。
・原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。
・頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際民事紛争処理」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載すること。
・10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトすること。
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枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。
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判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。
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解答の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。
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これは、成績評価のための筆記試験として50%分に該当するものにするものです。
問題
オランダ人Aは、英国の証券会社の東京支店に勤務するため日本に約3年間滞在した後、オランダに帰国した。Aは、来日前にフィンランドでYの製造販売していた運動機能強化用機器を購入し、それを日本に持ってきていた。この機器は野外で使用するものであり、約100kgの重さがあるため、オランダに持ち帰るには相当の費用が掛かることもあり、離日にあたり、親友になった日本在住の日本人Xにこれを無償で譲渡した。その約1年後の気温が35度を超え湿度も高いある日、Xが日本でこれを野外で使用していたところ、その機器から発火し、Xは大やけどを負った。
XはYを被告として、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起した。
なお、上記の(1)から(5)は相互に関連せず、異なる条件を決定したものである。
(1) Yは小さな会社であり、専らフィンランドでの販売を意図し、フィンランド語の説明書を付けているだけであって、フィンランド国外には何らの拠点もなく、海外からの発注にも応じていないとする。そして、そのフィンランド語の説明書によれば、気温が27度を超える場合には使用しないこととの注意が目立つように印刷されていたとする。このような場合、東京地裁はこの訴えについて国際裁判管轄を有するか。
(2) Yは著名な大企業で、フィンランドでは上記(1)のような製品を販売しているが、世界各国に販売子会社を設立しており、日本には100%子会社Bを設立し、Bを通じて日本市場向けにも同種の機器を販売している。ただ、日本向けの製品は、日本の夏は高温多湿の日があることを考慮した仕様のものとなっており、その仕様の製品であれば本件のような事故は発生しないとする。このような場合、東京地裁はこの訴えについて国際裁判管轄を有するか。
(3) Yは著名な大企業で、本件事故と全く同じ製品を世界中で販売しており、日本でも様々な広告媒体を通じて宣伝をしているが、日本には支店、営業所等はなく、もっぱら日本の商社が輸入した製品を小売業者に転売し、小売業者から消費者に販売されているとする。このような場合、東京地裁はこの訴えについて国際裁判管轄を有するか。
(4) この製品にはプレートが貼り付けてあり、そこには英語で、本製品に関するあらゆるクレイムはフィンランド法によりフィンランドの裁判所のみで解決するものとすることをご了解の上、ご使用下さい、との記載があり、本件事故が発生した製品にもこのプレートはそのままの状態で残っていたとする。Yは、Xの英語能力は高く、この記載を理解して使用していたはずであり、したがって、上記の記載内容を承諾して使用していたというべきであって、この専属的管轄合意により日本の裁判所の管轄は排除されている、と主張している。この点について、どのように判断するか。
(5) Yは、Xが日本で判決を得ても、Yの資産は日本になく、フィンランドは日本の判決を承認執行しないため、無意味な判決になるので、訴えの利益を欠くか、または日本の国際裁判管轄を否定すべき特段の事情があると主張している。この点について、どのように判断するか。
注:(5)の記載中、フィンランドが日本の判決を承認しないという点については不明であるが、そのように仮定するものとする。