早稲田大学法科大学院2009年度夏「国際私法II」試験問題

 

ルール

-         参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-         解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、200978()18:00です。

-         解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。

-         メールの件名は、必ず、「国際私法II」として下さい(分類のためです)。

-         文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際私法II」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-         枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-         判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-         答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-         これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものにするものです。

 

問題 1

 

 日本に本店を有する日本法人X会社は、A国に本店を有し、世界各国に支店や子会社を有するA国法人Y会社との間で消費者向けの製品(以下、「本件製品」という。)についての売買契約を締結した(以下、「本件契約」という。)。この契約によれば、Yの子会社でB国法人であるZがB国にある工場で製造する製品をいったんYが購入し、それをYからXが購入すること等とされ、契約書はC国語で記載されていた。本件製品は、Xが日本市場で販売することを予定したものであった。

 下記の設問はそれぞれ独立のものであり、それらが共有している事実関係は上記のことのみである。また、いずれの設問も、日本で訴訟になった場合にどうなるか問うものである。

 

(1)         本件契約書には契約全体の準拠法についての条項はないものの、本件製品の瑕疵による責任についてはB国法による旨の条項が置かれていた。X・Y間において本件製品の代金支払い遅延をめぐって紛争が生じた。この紛争に適用されるべき準拠法は何か。

(2)         本件契約の準拠法はC国法とする旨の定めがあり、また、本件製品の代金は13万ドルと定められていた。そこで、YはXに13万ドルを請求したところ、Xは、本件製品の瑕疵を原因として日本国内のXの顧客が指を切断するという事故が発生し(以下、「本件事故」という。)、Xはその損害賠償として10万ドルを支払ったことから、これについてYに対して10万ドルの求償請求権を有すると主張した。そして、Xはこの10万ドルの債権と13万ドルの債務とを相殺し、3万ドルのみをYの指定する銀行口座に振り込んだ。これに対して、Yは、そもそも本件製品には瑕疵がなかったと主張し、また、仮に瑕疵があったとしても、事故との因果関係を否定し、その10万ドルをYが負担する合理性はないと主張し、Xに対して残金10万ドルの請求をしている。この紛争に適用にされる準拠法は何か。

 

問題 2

 

 甲国法人Mは売買契約に基づいて売主である日本法人Nへの代金支払いをしようとしたところ、経済危機を理由とする国外送金の禁止命令(以下、「本件命令」という。)が甲国政府から発せられ、送金ができなくなった。この契約には日本法を準拠法とする条項はあるものの、不可抗力に関する条項はないという状況の下で、本件命令はこの契約の履行にどのような影響を与えるか。なお、甲国及び日本はいずれもIMF協定の締約国であるとする。