早稲田大学法学部2010年度後期「国際民事訴訟法II」試験問題

 

ルール

-         参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-         解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、201012()9:00です。

-         解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。(emailアドレスの名前と氏の間の _ は、アンダーバーです。)

-         メールの件名は、必ず、「W法学部国際民事訴訟法II」として下さい(分類のためです)。

-         文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「W法学部国際民事訴訟法II」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-         枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-         判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-         答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-         これは、成績評価のための筆記試験として50%に該当するものにするものです。なお、中間テストによる評価30%、出欠をとった日の出席者のサインによる評価20%をあわせて、最終的な成績評価をします。

-         中間テストを受験していない受講者は、問題2についても必ず解答してください。最大20%の割合しか割り当てませんが、中間テストの解答に代わるものとして採点します。

 

問題

 

1.       A国の第一審裁判所は、YXの名誉を棄損したことを認定し、XYに対する請求を全面的に認め、次のような判決を下した。

a.     YXに損害賠償として100万ユーロを支払え。

b.     裁判所に納付する訴訟費用はすべてYの負担とするとともに、これに加え、Xがこの訴訟のために要した弁護士費用等の費用を10万ユーロとみなし、YはこれをXに支払え。

c.      YXはこの判決を仮に執行することができる。

Yはこの判決を不服として、A国において控訴し、控訴審の審理が始まっている。

以下の各問題における事実関係は相互に独立したものであることを前提に、各問題に答えなさい。

 

 

(1)              XはこのA国第一審裁判所の判決に基づいて日本で強制執行することを日本の裁判所に求めている。争点のひとつとして、Yは、A国で控訴中であって、この第一審判決は未確定判決であることを理由に、この判決の執行は認められないと主張しているのに対して、Xは、この判決にはcの通り仮執行宣言がついているので、未確定判決であるとの理由での日本での強制執行は阻害されるはずはないと主張している。この争点はどのように判断されるべきか。

(2)              A国において、Yの控訴は棄却され、この判決が確定したとする。Xの日本におけるこの判決に対する執行判決請求訴訟において、Yは名誉棄損による損害賠償額を100万ユーロと認定していること(上記a)は日本での同様の事件についての損害賠償額と比べてあまりにも巨額であり、その執行は日本の公序良俗に反すると主張している。これはどのように判断されるべきか。

(3)              (2)の執行判決請求訴訟において、Yは、A国判決が弁護士費用等の賠償として10万ユーロの支払いを命じている点について、XA国での訴訟において弁護士を代理人とせず、本人訴訟をしていたのであって、この点も日本での執行を認めることはできないはずであると主張している。これはどのように判断されるべきか。

 

2.      <中間テストを受験していない受講者のみ解答すること> M国の民事訴訟制度には略式判決の手続があり、これによれば、裁判所は、原告・被告の主張の内容等の事情に照らして、被告の主張について正式な審理手続を尽くすまでもなく原告の主張を認めることができると判断した場合には、被告に一定金額の担保の提供を求め、これが提供されれば正式な審理手続に入るが、これが提供されない場合には直ちに原告の請求を認める旨の本案判決をしてよいとされている。M国でM国企業から3000万ドルの支払いを求める訴訟の被告となった日本企業Yは、M国の裁判所から命じられた500万ドルの担保の提供を拒否したため、上記の略式判決により敗訴し、この判決は確定してした。この略式判決は日本で承認・執行することができるか。