早稲田大学法科大学院2011年度「国際私法I」試験問題
ルール
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参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。
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解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、2011年12月24日(土)18:00です。
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解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください。masatoとdogauchiの間はアンダーバーです。
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メールの件名は、必ず、「国際私法I」として下さい(分類のためです)。
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文書の形式は下記の通り。
・ A4サイズの紙を設定すること。
・ 原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。
・ 頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際私法I」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。
・ 10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。
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枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。
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判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。
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答案の作成上、より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。
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これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものです。
問題
1.
日本人(女)Xは、イスラム圏の甲国の国籍を有するY(男)と、日本で出会い、4年前に日本で婚姻した。X・Yはともに現在30才であり、Xは出生以来日本に居住しており、Yは甲国で出生し、18才で留学のために来日し、卒業後、日本に居住し、ビジネスを立ち上げて成功している。そして、3年前頃から、Yは、ビジネスの関係で甲国に頻繁に渡航するようになり、2年前頃から年間300日以上は甲国で生活するようになった。Yは諸外国への出張も多く、日本には年に、各約1週間、3回程度来て、日本でのビジネスを見る程度になっている。
Yは1年前に甲国で甲国人Aと婚姻し、このことをXは最近知った。そして、XはこれについてYに問いただしたところ、甲国法によれば男性による重婚は認められており、ともにイスラム教徒であるYとAの婚姻は有効であると説明された(この甲国法の内容は正しいと仮定する)。
(1) 日本の法の適用に関する通則法上、YとAとの婚姻はどのように評価されるか。
(2) 日本において、Xは、YとAとの関係を理由として離婚請求をすることができるか。
(3) 仮にX・Yの離婚が認められたとする。この離婚から200日後、Xは子Bを出産した。Xは、Bの父はYであると主張している。日本民法772条によればBはYの嫡出子と推定されるが、甲国法によれば、離婚後の子と親との間には親子関係が生ずる余地はなく、認知という制度もないとする。その後、Yが死亡したとして、Yが日本に残した財産についてBに相続権はあるか。Yが甲国に残した財産についてはどうか。
2.
平成23年法律第61号により改正された民法834条以下が施行されたと仮定する。日本に20年以上にわたって居住する乙国人A・B夫婦は、その間の子である乙国人Cに対して日常的に虐待を繰り返していたことが発覚した。乙国法には、親権喪失制度も親権停止制度もないとする。
(1) 日本の検察官が民法834条に基づくA・Bの親権喪失の請求した場合、家庭裁判所はこれを認めることができるか。
(2) (1)の判断と比べ、日本の検察官が民法834条の2に基づく親権停止の請求をした場合には、家庭裁判所の判断に差があり得るか。