早稲田大学法学部2011年度春「国際民事訴訟法I」試験問題
(道垣内正人)
問題1
Y国政府は、日本の航空機メーカーXから、沿岸警備及び海難救助用の航空機3機(本件航空機)を購入する契約(本件契約)を締結し、そのすべての引き渡しを受けたが支払いをしない。本件契約によれば、本件航空機の引き渡し場所も代金支払場所もいずれもXの本社のある名古屋市とされている。
(1)
Xは名古屋地裁においてYに対する代金支払請求訴訟を提起した。これに対して、Yは裁判権免除を主張している。その理由として、Yは、本件航空機の購入が公的な目的によるものであるので、本件契約の締結は商業的活動ではないとの主張している。この主張について、どのように判断すべきか。
(2)
Yの裁判権免除の主張は認められないと仮定する。XのYに対する損害賠償請求訴訟について日本の裁判所には国際裁判管轄があるか。
問題2
甲国で婚姻した日本人X(女)と甲国Y(男)とは5年間、甲国のYの実家で生活をし、その間に子Aが生まれ、AはYの両親にかわいがられて育っていった。しかし、その頃から夫婦仲が悪くなった。そこで、Xは突然Yの実家を出て、ひとり暮らしを始めた。その後、X・Y間の離婚交渉が行われたが、Aの養育権をめぐって決着がつかないままに1年が経過したころ、Xは、深夜、Yの実家に忍び込み、睡眠中のAを連れ出し、早朝、Aとともに母国である日本に向けて甲国を離れた。
Yは、甲国の警察にXを容疑者として誘拐罪で刑事告訴し、逮捕状が出された。なお、Yは一度も日本に来たことはない。
(1)
Xは、日本の裁判所で、Yに対する離婚請求訴訟を提起した。日本の裁判所に国際裁判管轄はあるか。
(2)
Aの親権者をXとすることを求めるXのYに対する訴えについては、日本の裁判所に国際裁判管轄はあるか。