国際民事訴訟法

                               47100110 徳永吉彦

 

問題1()

 

問題2について

1、結論

 結論から述べると、執行判決請求訴訟中に当該外国において当該判決について再審を求める訴えが提起された場合、被告が執行判決訴訟においてその旨を疎明し(民訴法403条参照)、その疎明に理由があれば、再審の訴えの結論がでるまで、執行判決訴訟手続は停止されるべきである。

2、外国判決の承認・執行

(1)外国判決は民訴法118条の要件を充たすと、当然に日本において承認され既判力及び形成力が認められるが(自動承認制度)、かかる判決の執行をするためには執行判決を求める訴えを提起し、民事執行法243項(以下「民執法」とする)の要件を充たす必要がある。その要件は以下の5つである。

@外国裁判所の確定判決であること(民執法243項)

A判決裁判所に国際裁判管轄があること(民執法243項・民訴法1181号)

B適切な送達が敗訴の被告に対してなされていたこと(民執法243項・民訴法1182号)

C判決の内容と訴訟手続が日本の公序に反しないこと(民執法243項・民訴法1183号)

D判決国と日本との間に相互の保証があること(民執法243項・民訴法1184号)

(2)本問では、執行判決の審理中に当該外国において当該判決について再審を求める訴えが提起されているため、要件@の「外国裁判所の確定判決」と言えないのではないかが問題となる。

3、外国判決について日本での執行判決訴訟に与える当該外国での再審の影響

(1)そもそも、執行判決の要件として外国裁判所の確定判決が要求されているのは、日本での承認・執行後に、判決国でその判断が覆されると日本で無用な混乱を招き、法的安定性が害されるからである。そのため、外国裁判所の判決が確定しているか否かについては、判決国法上認められている通常の不服審査申立ての手段が尽きているか否かによって判断される。

そして、再審の制度は非常不服申立て手段と言われ、通常の不服審査申立ての手段には含まれないとされている。なぜなら、再審制度とは、確定判決に対して、厳格な要件を理由として当該確定判決を取り消して事件の再審判を求める非常の救済方法であり、未確定の判決に対する不服申立てである上訴とは異なるからである。また、再審の訴えは理由を限定することによって、確定判決による法的安定の要請と適正裁判への要請との調和を図っており、通常の不服申立て手段と違い確定判断が覆される可能性が小さいことも理由の一つである。判断が覆される可能性が小さいにもかかわらず、日本での執行を認めないことは外国判決の承認・執行を認めた趣旨、すなわち国際私法秩序の安定を害することとなる。

(2)そのため、当該外国において当該判決について再審を求める訴えが提起されたとしても、執行判決の要件たる「確定」には影響を及ぼさないのが原則である。もっとも、一度再審が始まり、確定判断が覆される可能性が高まったにも関わらず執行判決が下されてしまうのは、執行判決の要件に「確定」が要求されている趣旨、すなわち、判決国での判断が覆されることによる日本での法的安定性への侵害を防止することに鑑みれば妥当でない。そこで、そのような場合にはどのように対応することが望ましいかを日本の制度と比較して検討する。

4、日本制度との比較

(1)ここで、日本における制度と比較すると、日本では債務名義取得から執行までは@「債務名義」にA「執行文」が付与されてB「執行」という順番が採用されているが、執行の段階において、再審の訴えが提起されたとしても当該執行は当然には停止せず、民訴法40311号に基づく執行停止の裁判を提起することによって、執行を停止させることができるにすぎない。そのため、この考え方からすれば外国において再審がなされたとしても日本での執行判決訴訟において影響はないとも思える。

(2)もっとも、民執法226号は「確定した執行判決のある外国裁判所の判決」が日本で債務名義になると定めており、執行文が付与されなくとも債務名義となる日本の判決とは異なり、両者を同一視することはできない。そのため、債務名義の判断時点、すなわち執行判決訴訟において実質的に「確定した判決」と言えるか否かを判断する必要があると言える。そのため、実質的な判断を行う執行停止の裁判を「執行判決中」に行えるとするのが妥当である。

5、私見

 以上に見たように、執行判決訴訟中に当該外国で再審の訴えが提起された場合、@外国判決執行の趣旨A日本の制度との比較から、なんら訴訟に影響が無いと考えるのは妥当でない。

 そこで、日本では執行判決があって初めて外国判決が債務名義になることに鑑み(民執法226号)、執行判決訴訟中に当該外国で再審の訴えが提起された場合には、執行を求められている相手方が、「当該外国において再審の訴えが提起された場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があった場合(民訴法403条参照)」には、再審の訴えにつき判断が出るまで訴訟手続きを停止するのが妥当である。

 このように考えても、執行判決が出た後に執行停止事由として争った場合と比べて執行への遅延のおそれがあることに変わりは無いし、実質的な判断を必要とする債務名義を獲得するためには、執行判決中に再審の訴えについても考慮することは望ましいと言える。

 よって、執行判決請求訴訟中に当該外国において当該判決について再審を求める訴えが提起された場合には、被告がその旨を疎明し(民訴法403条参照)、その疎明に理由があれば、再審の訴えの結論がでるまで、執行判決訴訟手続きを停止すべきである。