国際民事紛争処理
E1112554 細沼 い竜
問題1
本件は、A国政府により設立されたB公社が発行した公社債(以下、「B公社債」という。)を、日本人Xが購入したところ、しかる後にA国の国家経済が破綻し、B公社債の金利の支払が停止されたことから、XがB公社を被告として日本の東京地裁に訴えを提起したものである。Xは、利率5%、一口100万円のB公社債を30口購入していることから、その訴えは、元本3,000万円及び利息の支払請求訴訟と思われる。以下では、これを前提とする。
一 小問(1)
本件訴訟において、Xは、自らの住所地である日本での提訴が可能であると主張している。これは、B公社に日本の裁判権が及ぶことを前提に、消費者契約である本件社債購入契約(以下、「本件契約」という。)に関する訴えについては、日本の裁判所に国際裁判管轄が認められるとの主張である。他方、B公社は、主権免除によりそもそも裁判権が及ばないこと、仮に及ぶとしても本件契約P条により日本の裁判所に国際裁判管轄はないこと、同Q条により、Xが個人であってもそれによりP条が排除されるものではないことを主張する。以下、日本の裁判権及び国際裁判管轄につきどのように判断するかを検討する[1]。
1 裁判権の有無
(1)主権を有する国家は、法的には等しく国際法上の法人格を有するものとして取り扱われるものであり、(主権平等の原則)、「対等なもの同士の間では相互に支配権を持たない」という考え方に基づき、他の国家の裁判権からの免除を享有するとされる[2]。かつては、国家は常に他の国家の裁判から免除されるという絶対的免除主義が採られていた。しかし今日では、国家と取引などをする私人や私企業の権利保護のため、国家の行為を主権的行為と業務管理的行為とに分け、後者により生ずる訴訟については裁判から免除しないとする制限免除主義が一般的となっている[3]。2004年には、制限免除主義に立つ「国家及び国家財産の裁判権免除に関する国際連合条約」(以下、「裁判権免除条約」という。)が採択されている。
日本においても、近年、最高裁がそれまでの絶対的免除主義から、制限免除主義を採ることを示した[4]。そして、裁判権免除条約を踏まえ、2009年に「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」(以下、「民事裁判権法」という。)が成立・公布され、2010年4月から施行されたことで、現在は同法により裁判権の有無が判断される[5]。
(2)それでは、本件において、B公社に裁判権免除が認められるだろうか。民事裁判権法は、免除の享有主体を「外国等」(2条)としたうえで、4条において、外国等は原則として民事裁判権から免除されるとする。そして、5条以下で、その例外として免除されない場合を定める。本件では、B公社が法人であることから、そもそも免除の享有主体たる「外国等」といえるかが問題となる。
(3)免除の享有主体である「外国等」とは、@国及びその政府の機関(2条1号)、A連邦国家の州その他これに準ずる国の行政区画であって、主権的な権能を行使する権限を有するもの(同2号)、B主権的な権能を行使する権限を付与された団体が、当該権能の行使としての行為をする場合(同3号)、C前三者の代表者であって、その資格に基づき行動するもの(同4号)をいう。
では、B公社はこれらのいずれかに該当するか。まず、1号の「国及びその政府の機関」にいう「政府の機関」とは、当該国の立法、行政又は司法機関を意味し、国会や中央省庁、裁判所がこれに当たるとされる[6]。そのため、政策投資金融業務を行う法人にすぎないB公社は、「政府の機関」とはいえない。次に、本件ではA国の具体的な国家構成は明らかではないが、B公社は「連邦国家の州その他これに準ずる国の行政区画」ではなく、2号にも当たらない。では、3号にいう「主権的な権能を行使する権限を付与された団体」といえないか。「主権的な権能」とは、裁判権免除が国家主権などの点を根拠に認められるものであることから、国家主権の具体的発現と位置づけられる立法、司法または行政の作用を行う権能を指す[7]。国家とは独立した法人であっても、当該国家の金融政策を実行している中央銀行などは「主権的な権能を行使する権限を付与された団体」に当たるとされる[8]。B公社は、法人ではあるものの、A国内の社会インフラ投資による経済活性化によって財政問題を解決するという、国家再生プロジェクトのための資金調達を行うべく設立され、その株式はすべてA国政府が保有している。かかるB公社の役割やその構成をみると、本来国家が行うことを代わりにB公社が行っているとして、A国の主権的な権能を行使する権限を付与されているとも思われる。しかし、B公社の業務は、上記資金調達のために社債を発行するというあくまで商業的なものであり(8条1項参照)、国家と同等の統治権を行使するものとはいえない。そのため、「主権的な権能を行使する権限を付与された団体」とはいえないと解すべきである[9]。
(4)以上から、B公社は2条にいう「外国等」には該当せず、裁判権免除は認められない。よって、本件では、裁判所は日本の裁判権が認められるという判断をすべきである。
2 国際裁判管轄の有無
(1)国際法上日本の裁判権が認められるとして、国際裁判管轄まで認められるか。国際裁判管轄は、どこの国の裁判所がその事件について裁判を行うべきかという問題である。前述の裁判権が、国家の主権などの観点からの国際法上の制約であるのに対し、国際裁判管轄は、民事手続上の正義という観点からの、国家による自己抑制であるとされる[10]。その有無を判断するためのルールは、訴訟法上の正義から決定すべきという普遍主義が妥当とされ、我が国では、2012年4月に民事訴訟法(以下「民訴法」という)に新たな規定(民訴法3条の2以下)が加えられるまでは、判例法によっていた[11]。2012年の改正は、当事者の予測可能性および法的安定性を向上させるため、国際裁判管轄につき具体的かつルールを定めることで、紛争の適正かつ迅速な解決を目指したものである[12]。
(2)それでは、本件において、日本の裁判所に国際裁判管轄があるか。まず、被告たるB公社の普通裁判籍による管轄(民訴法3条の2第3項)は認められない。なぜなら、法人に対する訴えについては、その主たる事務所又は営業所が日本国内にあるとき、それらがないか所在地が知れない場合は代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときに、日本に管轄が認められるが、本件では、B公社は、日本国内に事務所等や代表者等を有しないと思われるからである。
では、いわゆる特別裁判籍(民訴法3条の3)により管轄が認められないか。この点、B公社債の元本3,000万円及び利息の支払を求める本件訴訟は、金利の支払の停止という本件契約の債務不履行を理由とする解除に基づく原状回復請求を目的とする訴えと考えられる。かかる訴えは、「契約上の債務に関する請求を目的とする訴え」(同条1号)に当たり[13]、同号所定の履行地が日本国内にあれば、日本の裁判所に管轄が認められることになる。本件では、履行地の定め等は明らかではないが、金利の支払が日本国内にある銀行にXが有する口座であるような場合は、同号の特別裁判籍により管轄が認められよう。
(3)さらに、本件契約は、個人投資家であるXとA国の特殊法人であるB公社との間で締結された「消費者契約」(民訴法3条の4第1項)に当たる。そのため、本件訴訟を提起した時又は本件契約の締結の時におけるXの住所が日本国内であると考えられる本件では、日本の裁判所に管轄が認められる。
(4)これに対し、B公社は、本件契約P条により日本の裁判所に国際裁判管轄はないことを主張する。P条は、一切の紛争についてA国の裁判所を専属管轄とする、専属管轄の合意である。かかる合意は有効か。
民訴法3条の7第1項は、原則として、当事者が合意により国際裁判管轄を定めることを認める。これにより、国内取引に比べて不確定要素が多い国際取引において、紛争が発生した場合の解決方法をあらかじめ定めておくことで、合理的なコストで円滑・迅速な解決を得ることが可能となる[14]。この合意は、「一定の法律関係に基づく訴えに関し」「書面」でなされなければならない(同条2項)。P条は、単に「一切の紛争について」としているため「一定の法律関係」といえるかが問題となるが、B公社債購入契約の一条項として、同契約から生ずる「一切の紛争」であることを前提にしていると解され、「一定の法律関係」といえよう[15]。また、本件では、少なくとも「電磁的記録」による合意はなされていると思われ、「書面」性も充たす(同条3項)。
もっとも、本件契約のように消費者契約における管轄の合意については、さらなる有効要件を充たさねばならない。すなわち、@紛争発生後の合意である場合(同条5項柱書き反対解釈)、A消費者契約締結時の消費者の住所国での提訴を可能とする付加的管轄の合意である場合(同条項1号)、B消費者が合意された国の裁判所に提訴したか、又は事業者が提訴した訴えについて消費者が管轄合意を援用した場合(同条項2号)、のいずれかに該当する必要がある。消費者契約では約款などで専属管轄の合意条項がおかれても、消費者がその意味を十分に理解せずに契約することが多い。また、交渉によりその条項の削除を求めることも困難とされる。このような場合、国内事件であれば移送(民訴17条)により当事者の衡平を図ることができるが、国際事件では移送ができない。そのため、管轄の合意自体の効力を、一定の範囲に限定している[16]。
まず、P条は契約締結時の合意であるから、@には当たらない。また、一切の紛争についてA国の裁判所を「専属管轄」とするもののため、Aにも当たらない。そして、本件訴訟はXが日本の東京地裁に提訴したものであるから、Bにも当たらない。
よって、P条は上記@〜Bのいずれにも該当せず、管轄の合意として無効である。
(5)これに対し、B公社は、Xが個人投資家であることを理由に特別の保護を受けることはできないとする本件契約Q条の存在を主張する。これは、Xが個人投資家であっても消費者保護のための法は適用されず、あくまでP条によるべきとの主張と考えられる。問題は、上記の趣旨から設けられた消費者保護のための規定を排除する契約条項が、有効といえるかどうかである。
この点、民事訴訟法改正前の判例で、管轄の合意が「はなはだしく不合理で公序法に違反するとき等」には、その合意は無効となると判示したものがある[17]。そこで、本件でも、Q条が公序法に違反するとして無効にならないか。改正法では、前述の3条の7という規定が設けられたことから、公序という明文にない一般原則の適用には慎重である必要がある[18]。しかし、同条で対応できない場合において、なおはなはだしく不合理な結果を生ずるような場合には、公序の適用を認めるべきと考える。
Q条は、B公社債による資金調達がA国国家再生プロジェクトに基づき、本件契約が公的なものであることを理由に、個人であっても特別の保護を受け得ないとする。しかし、民訴法3条の4や同条の7の規定は、まさに本件のように契約当事者間で交渉力や情報力に格差がある場合に、劣位に立つ消費者の利益が不当に害されないようにするためのものであり、公益性の強い規定といえる。かかる趣旨に基づく規定を、当事者の合意、しかも優位に立つ側の定めた契約条項により排除することは、消費者の立場を弱め、はなはだしく不合理な結果を生ずるといえる。
したがって、Q条は、公序違反として無効というべきである。
(6)以上より、裁判所は、民訴3条の4第1項により、本件訴訟について日本の裁判所に国際裁判管轄があると認める判断をすることになる。
二 小問(2)
XによるP条の専属管轄合意についての錯誤無効の主張は、管轄合意の成立を争う主張である。かかる主張の判断は、いずれの国の準拠法によるべきか。
(1)これについての考え方としては、法廷地国際民事訴訟法によるべきとする説、契約準拠法によるべきとする説などがあるとされる[19]。この点、日本の民事訴訟法には規定がなく、実体法に委ねていると解されることから、法適用に関する通則法(以下、「通則法」という。)7条から9条を適用ないし準用し、裁判管轄の合意の成立についての準拠法を定めるべきと考える[20][21]。もっとも、管轄の合意は一般的に契約の一条項であることが多いため、契約全体について準拠法を指定する条項があれば(通則法7条)、基本的に管轄の合意の準拠法もそれによることになる。そのような条項がなく、明示・黙示の法選択も認められない場合には、通則法8条により、最密接関係地の法として、管轄裁判所として指定された裁判所がある国の法によるべきと考える。
本件契約では、契約全体について準拠法を指定する条項があるかどうかは明らかではない。しかし、管轄の合意についてのP条において、準拠法はA国法とされていることから、同国法によるべきである。
(2)以上より、P条の専属管轄合意に対する錯誤無効の主張についての判断は、A国法を準拠法とすべきである。
三 小問(3)
Xは、証券会社Yを通じてB公社債を購入しているが、購入の際のYの説明に問題があったとして、Yに対し訴えを提起している。かかる訴えにつき、日本の裁判所に国際裁判管轄はあるか[22]。
1 普通裁判籍による管轄
まず、民訴法3条の2第3項の普通裁判籍による管轄は認められない。なぜなら、Yはアメリカに本社を置き、その統括本部も香港にあるため、日本国内にはYの主たる事務所又は営業所がないと思われるからである。
2 特別裁判籍による管轄
特別裁判籍による管轄は、提起された訴えに応じて異なる(民訴法3条の3)。XがYに対して提起した訴えは、B公社債の販売の際の説明義務違反を理由とするものであり、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求訴訟と考えられる。そこで、以下両者を分けて検討する。
(1)債務不履行に基づく訴えの場合
この場合、「契約上の債務の不履行による損害賠償の請求」として、同条1号所定の履行地が日本国内に認められれば、管轄が認められる。
(2)不法行為に基づく訴えの場合
不法行為に関する訴えは、同条8号により、不法行為地が日本国内にあるといえるかが問題となる。不法行為地には、加害行為地及び結果発生地が含まれる[23]。本件では、XY間の契約はインターネットを介して締結されており、加害行為地は明確には特定しえない。しかし、結果発生地については、不十分な説明により3,000万円のB公社債を購入したという損害はXの住所地たる日本国内で発生したといえる。よって、日本に管轄が認められる。
3 消費者契約に関する訴えの管轄
さらに、XY間の契約は、個人と事業者との間で締結された「消費者契約」であるから、民訴法3条の4第1項の適用がある。これにより、XのYに対する訴えは、訴え提起時又は契約締結時のXの住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所に管轄が認められる。本件では、いずれの時点でもXの住所は日本国内にあると考えられるため、本件訴えについて、日本の裁判所に管轄が認められる。
問題2
一 外国判決の承認・執行
外国の司法機関がした判決は、わが国において当然には効力を有しない。外国判決の効力を認めることは国際法上の義務ではなく、これを一切拒否することも可能とされる。もっとも、国際私法秩序安定のために、多くの国では一定の要件のもとでこれを承認している[24]。日本も、外国判決の既判力及び形成力については、民訴118条がその承認の要件を定め、当該判決がそれを充たす場合には、その確定の瞬間に日本でも効力が認められる。他方、執行力については、承認された外国判決の執行力を日本で認めるのではなく、日本で執行判決を求める訴え(民事執行法〔以下、民執法という〕24条1項)により執行判決を得て、それが債務名義となる(民執法22条6号)ことで、日本の執行判決の執行力を及ぼすという形をとる。
二 外国における再審請求の影響
では、日本で外国判決についての執行判決を求める訴えが係属中に、判決国で当該判決について再審を求める訴えが提起された場合、日本での訴えにどのように影響するか。
(1)外国判決について執行判決を求める訴えは、「外国」「裁判所」の「確定」「判決」でなければならない(民執法24条3項)。外国で再審を求める訴えが提起された場合、「確定」とはいえなくなり、当該訴えを却下(同条項)しなければならなくなるかが問題となる。
そもそも、「確定」性が要求されるのは、日本での承認・執行後に、判決国でその判断が覆されると、日本でも混乱が生じてしまうからである。そのため、「確定」とは、かかるおそれがない場合すなわち通常の上訴ができなくなっていることをいう[25]。そして、再審を求める機会がある場合でも、それは例外的な機会であり、いったん承認した外国判決の効力が再審により判決国で覆されることは稀であるため、「確定」性を損なわないとされる[26]。このように解することで、債務者が判決確定を遅らせて執行を引き延ばすことを防ぎ、債権者の迅速な権利行使を保障できる[27]。
(2)よって、判決国において再審を求める訴えが提起されたことは、却下事由に当たらず、日本での執行判決を求める訴えに影響を及ぼさない。
以 上
[1] 裁判権や国際裁判管轄の有無は職権調査事項であり、職権での探知に服するため、当事者からの主張をまたず、裁判所が職権でその有無を判断する(国際裁判管轄につき、民訴3条の11)。新堂幸司『新民事訴訟法〔第5版〕』(2011、弘文堂)101頁、佐藤達文・小林康彦編『一問一答 平成23年民事訴訟法等改正 —国際裁判管轄法制の整備』(2012、商事法務)167頁参照。
[2] 飛澤知行編『逐条解説 対外国民事裁判権法 —わが国の主権免除法制について』(2009、商事法務)13頁参照。
[3] 澤木敬郎・道垣内正人『国際私法入門〔第7版〕』(2012、有斐閣)263頁以下参照。
[4] 最判平成18年7月21日民集60巻6号2542頁は、「外国国家は、その私法的ないし業務管理的な行為については、我が国による民事裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り、我が国の民事裁判権から免除されないと解するのが相当である。」と判示した。
[5] 裁判権免除条約につき、日本は2007年1月に署名、2010年5月に加入しているものの、発効要件である30カ国による批准には至っておらず、平成24年7月現在では未発効である。もっとも、民事裁判権法は同条約を「踏まえて」制定されたもので、その国内実施法ではないと位置づけられる。そのため、同条約が未発効であっても、同法により裁判権の有無を判断することができる。道垣内正人「外国等に対する我が国の民事裁判権」ジュリスト1387号58〜61頁参照。
[6] 村上正子「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律(対外国民事裁判権法)」ジュリスト1385号69頁以下参照。
[7] 前掲飛澤『逐条解説』13頁参照。
[8] 前掲村上ジュリスト参照。
[9] 本件と同様に特別法により設立された外国金融公社を被告とする提訴がなされた事案として、民事裁判権法施行前のものではあるが、東京高裁平成14年3月29日(判例集未登載)がある。裁判所は、「外国国家の国内法における当該外国国家とは独立した法主体である法人については、たとえ、それが公法人であっても、当該外国国家と同等の主権免除特権を原則として有するものではない。」とした。その上で、被告公社が、金融公社法に基づき、国及びその行政機関のために資金を借り入れることを目的として国が設立した法人であること等の性格を踏まえても、あくまで国と別個独立の法主体であり、その名において訴訟の当事者となることができる等の事情から、国家機構にはあたらないとした。
なお、同訴訟は当該外国も被告としていたが、裁判所は絶対的免除主義の立場から、当該外国に対する訴えは却下した。森下哲朗「債券購入業者による外国国家等に対する訴訟の可否」(ジュリスト1261号)184〜188頁参照。
[10] 前掲『国際私法入門』272頁以下参照。
[11] 最判昭和56年10月16日民集35巻7号1224頁(マレーシア航空事件判決)『国際私法判例百選〔第2版〕』88事件、及び最判平成9年11月11日民集51巻10号4055頁(百選〔第2版〕89)によれば、国際裁判管轄は、当事者間の公平、裁判の適正・迅速を期するという理念により条理に従って決定すべきであり、民訴法の定める土地管轄のいずれかが日本にあれば、管轄を肯定するのが条理に適うが、日本で裁判を行うことがこの条理に反する特段の事情がある場合には、管轄を否定すべきとされてきた。道垣内正人『国際契約実務のための予防法学 — 準拠法・裁判管轄・仲裁条項』(2012、商事法務)158頁以下参照。
[12] 前掲『一問一答』2頁参照。
[13] 同上36頁参照。
[14] 前掲『国際契約実務のための予防法学』197頁参照。
[15] 同上199〜200頁参照。
[16] 前掲『一問一答』143頁参照。
[17] 最判昭和50年11月28日民集29巻10号1554頁(百選[第2版]99)参照。
[18] 百選99高橋宏司解説、前掲『国際契約実務のための予防法学』207〜209頁参照。
[19] 百選99事件解説参照。なお、前掲最判昭和50年11月28日の原審である大阪高判昭和44年12月15日判時586号29頁は、「合意は訴訟行為的合意であり、かつ、問題が法廷地法の裁判権の排除に関するものであるから、本件国際的裁判管轄の合意の有効性の判断の準拠法は契約の準拠法ではなく、これを問題にする法廷地たる日本の国際民事訴訟法によって決定されるべきものと解する。しかし、わが国には国際的裁判管轄の合意に関する国際民事訴訟法ともいうべき直接の成文法規は存在しないので条理上、事件の国際性および合理的国際慣行に反しない限り、国内管轄に関する民事訴訟法の諸規定を類推適用して処理するのが相当であ〔る〕」とした。この上告審である前掲昭和50年判決は、これにつき肯定も否定もしていない。
[20] 前掲『国際契約実務のための予防法学』202〜205頁参照。
[21] この考え方は、契約の一部について分割して準拠法を定めることを認める(分割指定)ことを前提とする。分割指定の有効性については、通則法上否定されておらず、有効としてよいと解する。前掲『国際私法入門』195頁参照。
[22] なお、XY間の契約には、紛争はすべて香港での仲裁による旨の条項があるが、かかる仲裁条項の存在は、妨訴の抗弁としてYの主張をまって判断され、訴えの利益に係るものであるため、職権調査事項かつ職権探知に服する管轄の問題ではないと解する。最判平成9年9月4日民集51巻8号3657頁参照。
[23] 前掲『国際私法入門』284頁参照。
[24] 同上327頁参照。
[25] 前掲『国際私法入門』329頁参照。
[26] 前掲『国際契約実務のための予防法学』127頁参照。
[27] 高桑昭・道垣内正人編『新・裁判実務大系第3巻 国際民事訴訟法(財産法関係)』(2002、青林書院)313〜317頁参照。