早稲田大学法科大学院2012年度夏「国際民事訴訟」試験問題

 

ルール

-      参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、2012715()21:00です。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください(emailアドレスの_はアンダーバーです)

-      メールの件名は、必ず、「WLS国際民事訴訟法」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「国際民事訴訟法」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-      判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-      答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-      問題1と問題2は、事実関係等において全く関係がありません。

-      これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものにするものです。

 

問題

 

問題1 

A国は、財政危機に陥っており、かつ、国内の個人・法人の資産も十分にはない。そのような中、A国は、B公社(政策投資金融業務を行うため、A国法に基づき設立された特殊会社であり、A国政府が100%の株式を保有)が外国で公社債を発行し、その資金をA国内の社会インフラ投資に投下することにより、経済活性化による財政問題の解決を図るとの国家再生プロジェクトを決定し、実行に移した。B金融公社は、世界各国で利率5%、一口100万円、総額3兆円、5年もの公社債(以下、B公社債)の販売を行った。投資家とB公社との間の約定には、準拠法はA国法とし、一切の紛争についてA国の裁判所を専属管轄とする旨の条項(P)があり、さらに、この資金はA国国家再生プロジェクトに基づくものであり、社債購入契約は公的なものであり、個人投資家が購入する場合にも、個人の投資行為であることを理由として特別の保護を受けることはできない旨の規定(Q)が置かれている。

B公社債は日本市場でも人気を集め、多くの個人がこれを購入し、日本だけで8000億円が販売された。しかし、3年後、A国の国家経済は破綻し、B公社債の金利の支払いは停止された。

以下の各問につき、東京地裁の担当裁判官の立場でどう判断すべきか答えなさい。

 

(1) 日本在住の個人投資家である日本人Xは、手にした退職金で、B公社債を30口購入していた。XB公社を被告として東京地裁に提訴し、B公社との契約は消費者契約であり、Xの住所地である日本での提訴が可能であると主張している。他方、B公社は、第1に、主権免除が認められるべきであること、第2に、そうでなくても、P条により、日本の裁判所には管轄がないこと、第3に、Q条により、Xが自己が個人投資家であることを理由に特別の保護を受けることはできないこと、以上の主張をしている。

日本国の裁判権及び国際裁判管轄についてどのように判断するか。

 

(2) (1)において、XP条の専属管轄合意について錯誤による無効を主張したとする。

この点を判断する準拠法は何か。

 

(3) XB公社債を購入したのは、証券会社Yを通じてであった。Y証券会社はアメリカに本店を置くYグループがケイマン法人として設立した会社であり、香港に統括本部を置き、東アジアでのビジネスを展開しており、日本向けには日本語のウェブサイトを設定し、インターネットを通じてのみ業務を行っていた。XB公社債を購入したのもインターネットを通じてであった。インターネットを介して締結されたXY間の契約によれば、Yはその販売する商品がデフォルトになっても何らの責任を負わない旨の条項とともに、準拠法は香港法とし、紛争はすべて香港での仲裁による旨の条項がある。

Xは、B公社債の販売にあたってYとしては、B公社債の発行条件とリスクを十分に説明すべきであったのに、専ら5%で5年間運用できるチャンスであるとの説明をしてXに販売したことは問題であると主張し、Yを被告として東京地裁に提訴した。

XYに対する本件訴訟についての日本の国際裁判管轄についてどのように判断するか。

 

問題2

外国判決に対して執行判決を求める訴訟が日本で係属中に、当該外国において当該判決について再審を求める訴えが提起された。このことは日本での当該執行判決請求訴訟にどのように影響するか。