早稲田大学法科大学院2014年度冬「国際私法I」試験問題

 

ルール

-      参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、20141227()23:00です。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください(emailアドレス中の_はアンダーバーです)。

-      メールの件名は、必ず、「WLS国際私法I」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「WLS国際私法I」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-      判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-      答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-      これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものにするものです。

 

問題

 

甲国人男性である分子生物学研究者Aは、10年前に日本で開催された学会で、その学会の事務局の手伝いをしていた日本女性である分子生物学専攻の大学院学生Bと知り合った。そして、Aはいったん甲国に戻ったものの、直ちに再来日し、日本でBと婚姻した(その時点でA30歳、B25)。そして、Aは日本で大学教授となり、日本における永住資格を得ている。Bは製薬会社の研究員である。ABの間には、現在8歳になる実子Cがいる。

Bは病気のために子を産むことができなくなったが、ABともに、もうひとり子が欲しいということで意見が一致し、生殖補助医療により子をもうけることとした。具体的には、代理出産を合法的にすることができる乙国においてAの精子を用いて乙国人の女性Dの胎内で受精させるという方法を用いることとし、実際、Dは子Eを出産した。ADの間で締結された契約によれば、DAの精子により懐胎して出産した子は、国法に基づく手続を経て乙国においてDからAに引き渡すこととされており、実際、ABとともに乙国に赴き、EDから引き取り、Eを連れて日本に帰国した。乙国法上、EABの間の子とされ、その旨を記した証明書が乙国政府当局から発行されている。帰国後、ABは、居住している区の区役所でEABの子として戸籍上の届出をしたところ、この届け出は受理された。

その直後、Aは、Bには17歳の頃生んだ子Fがいることを知るに至った。Fの父は不明である。Fは、生まれて間もなく丙国人G及び日本人H(ともに丙国在住)の夫婦との間で養子縁組をし、丙国に引き取られ、以来、丙国で生活をしてきた。そして、この養子縁組の直後に丙国に帰化し、日本国籍は喪失している。Fは、本年18歳になったことから、GHから真実を聞かされ、観光ビザで来日してABの前に現れたのである。

以下の設問はそれぞれ独立しており、すべて、日本の裁判官の立場で、法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。答案においても同じ。)等に照らして答えなさい。なお、反致について論じる必要はない。

(1) ABは日本にある甲国大使館において外交婚により、2004121日に婚姻した。そして、Bは、同年1210日、区役所にAとの婚姻の届出をした。日本法上、ABの婚姻の日はいつか。

(2) 日本の法制度からみて、Eの父母は誰か。

(3) FGH夫婦との間の養子縁組が断絶型か非断絶型か(前者であればBF間の母子関係が存在し、後者であればそれは断絶されている)はいずれの法によって判断されるか。

(4) BF間に法律上の母子関係があるとする。現在、GHは事業に失敗して困窮状態にある。Fはできれば日本の大学に進学したので、Bに扶養料を請求したいと考えている。この扶養料請求を判断する準拠法は何か。なお、丙国法によれば、養子は実親との関係では相続権のみが認められ、実親に対して扶養を請求することはできないとされている。

(5) Aは、Fとの間で養子縁組をすることを考えている。Aの本国法である甲国法上、AFと何らの支障もなく養子縁組できるが、Fの本国法である丙国民法によれば、次のように定められている。

 α条:すでに養子となっている者は重ねて他の者の養子となることはできない。

 β条:養親に実子がある場合には、その実子の同意がない限り、養子縁組をすることはできない。

Aの実子Cはこの養子縁組に反対してと仮定して、AF間の養子縁組は日本においてどのように扱われるか。