早稲田大学法科大学院2014年度冬「国際関係私法基礎」試験問題

 

ルール

-      参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、20141227()23:00です。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください(emailアドレス中の_はアンダーバーです)。

-      メールの件名は、必ず、「WLS国際関係私法基礎」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「WLS国際関係私法基礎」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-      判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-      答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-      これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものにするものです。

 

問題

 

甲国人男性である国際政治学者Aは、20年前にヨーロッパで開催された学会で日本人女性X1と知り合い、その直後に来日してX1と婚姻し(その時点でAX1はともに30)、以来、日本で国際政治評論家、テレビ・タレントなどとして活動していた。AX1との間には現在18歳となる子X2がいる。なお、AX1X2はいずれも重国籍者ではない。

Aは、乙国の家電メーカーBが乙国で製造し日本に輸出した布団乾燥機を日本の家電量販店Cを購入して、その日のうちに東京の自宅で使用したところ、その布団乾燥機の欠陥により発火し、自宅は全焼し、Aは大やけどを負った。X1X2は外出中で無事であった。Aはしばらく東京で入院加療していたが、入院から2か月後、同年2月、甲国に信頼できる呪術師がいるとの理由で、甲国に赴いた。これは、甲国への渡航は危険であるからやめた方がよい旨の日本の主治医の忠告を無視して強行したものであった。X1X2は甲国には一緒に行かず、日本に残った。そして、Aは甲国到着後、呪術師による治療を受けたが、その直後に死亡した(享年50)

以下の設問はそれぞれ独立しており、すべて、日本の裁判官の立場で、法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。答案においても同じ。)等に照らして答えなさい。

(1)  X1X2が自宅の焼失その他自らが被った損害についてB及びCに対して賠償請求訴訟を提起したとする。それらの請求に適用されるのはいずれの国の法か。

(2) X1X2Aの相続人として、Aの被った損害についてもB及びCに対して賠償請求をしている。X1X2Aの相続人か、また、それぞれの相続分はどのくらいかは、いずれの国の法で判断されるべきか。通則法38条以下にも留意して、問題となり得る点をできるだけ多く挙げなさい。

(3) Aの相続についての準拠法は甲国法であるとする。しかし、相当の努力をしたものの、甲国法の内容がよく分からない。そこで、合議体を構成する裁判官のひとりが次のようなドラフトを作成してきた。あなたが裁判長であるとして、これをどのような理由からどのように修正するか。

「甲国の相続法については、その一端すら明らかになっておらず、甲国法上の条理を合理的に推認することも極めて困難である。そこで、Aの死亡の原因となった本件火災が日本で発生したものであること、同人の妻子であるX1・X2がいずれも日本国籍を有していることなどの本件において認められる事情を考慮すれば,本件においては,Aの相続について,日本法を適用するのが相当である。」

(4) Aの相続に適用される甲国法によれば、X1X2Aの相続人であり、その相続割合は1:9であるとする。この甲国法の適用結果は日本において認められるか。

(5) 甲国法によればX1X2Aの相続人である。他方、A B及びCに対する損害賠償請求権の準拠法は日本法であるとする。X1X2がこの損害賠償請求権を相続するか否かはいずれの法により判断されるべきか。

(6) 布団乾燥機の欠陥とAの死亡との因果関係について争いがある。日本から甲国への移動費用、甲国での呪術師による加療費用、及びAの死亡により増加した損害賠償額等の請求の可否はいずれの国の法により判断すべきか。