WOWOW Tennis Online:2010/07/16より引用

 

イスタンブール初出場のセレナ、トルコ・テニス協会会長が“裏金”暴露!?

 

 今年のウィンブルドンを圧倒的な強さで制した女王セレナ・ウイリアムズは、夏のハードコートシーズンのスタートに意外なところを選んだ。現地726日にトルコで開幕する賞金総額22万ドル(約1900万円)のイスタンブール・カップ。WTAツアーの中では〈インターナショナル〉という格下カテゴリーに属し、それに対する格上カテゴリー〈プレミア〉の大会が同週に米国のスタンフォードで行われるにもかかわらず、そちらを蹴ってイスタンブールの大会に初出場するという。

 

 世界ランキングトップ10プレーヤーには、プレミア大会の中でも賞金総額でのカテゴリー別に細かく出場大会数の最低ラインが定められているが、今年のセレナはグランドスラム以外ではまだツアー3大会しか出場しておらず、これからフルに出てもその大会数には及ばないというのに……。

 

 それは、トルコのテニス協会会長がうっかりなのか意図的なのか口にした内容と関係あるのだろうか。「実はセレナ・ウイリアムズに15万ドル(約1300万円)を払った」などと、公表はタブー視されている出場料まで明かしてしまったのだ。「半年間、彼女を呼ぶためにどれだけ大変な思いをしてきたか…。エージェントや両親とも話し、大会期間中に彼女がどこで泊まるかとか、どのイベントに出るかとか、念入りに調整して、本当に大変だった。その甲斐があったというもの。でもセレナは普段もっと多くの金をもらっているのだから、その中からイスタンブールを選んだのは金額の問題ではなく、この大会そのものに来たいという気持ちがあったからだ」。

 

 トッププレーヤーを大会へ呼ぶために賞金以外の出場料なるものが存在することは、いわばテニス界の“暗黙の了解”。そこにいくつものオプションをつけるなど、大会側は並々ならぬ努力をしている。今年10月の楽天ジャパン・オープンではラファエル・ナダルが初来日することが決まっているが、世界王者の来日動機を「ドラゴンボールの大ファンで…、日本が好きで…」などと本気で考えていては、それこそおかしい。彼らはプロであり、テニスツアーはビジネスなのだから。

 

 何しろ、一般的な出場料が公表されていないだけにセレナの15万ドルが高いのか安いのか、あるいは平均的なのかは断言できないし、セレナ側がイスタンブールの大会のどんなところに魅力を感じたのかも分からない。ただ一つ言えることは、セレナはツアーのルールなどにはまったく縛られていないということだ。

 

 また、数年前からUSTA(アメリカテニス協会)は全米オープンに続く北米のハードコート大会を〈全米オープン・シリーズ〉と位置づけ、シリーズ上位選手には全米オープンの賞金に上乗せするシステムをつくったが、こういう“煽り”に積極的に乗る気配もない。ツアーは調整程度にこなし、グランドスラムに全力を注ぐ。20084月のチャールストン以降レギュラーツアーの優勝が一度もなく、その間に年末のツアーチャンピオンシップとグランドスラムのタイトルが6つ。『セレナ・ウイリアムズ』というプロテニスプレーヤーの徹底したスタンスが見えてくる。

 

 果たして、イスタンブール出場は格下の大会で楽に試合数をこなしていこうという目論みか…。セレナ独自の女王道は、各大会のステータスを高めようと四苦八苦するツアー運営への挑戦のようでもある。