法政大学法科大学院2015年度前期「国際関係法(私法系分野)I」試験問題

 

ルール

-      参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。

-      解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、201578()21:00です。

-      解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください(emailアドレス中の_はアンダーバーです)。

-      メールの件名は、必ず、「HLS2015国際関係法(私法系分野)I」として下さい(分類のためです)。

-      文書の形式は下記の通り。

A4サイズの紙を設定すること。

原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。

頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「HLS2015国際関係法(私法系分野)I」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。

10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。

-      枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。

-      判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。

-      答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。

-      これは、成績評価のための筆記試験として100%分に該当するものにするものです。

 

問題

 

以下の事案を読み、設問に答えなさい。準拠法決定については「法の適用に関する通則法」(以下、「通則法」)をはじめとする日本の国際私法に従って判断し、反致は成立しないものとする。

事案:

日本人男性であるAは、甲国人女性Bと婚姻して日本で生活していたが、実子に恵まれなかった。ABとも養子縁組の可能性について考えていたところ、乙国に留学中のBの妹C(甲国人・未婚)が乙国で子Dを出産した(その後、母子とも乙国在住)。そこで、ABは、Dを養子としてもらい受けることにした。Dの父親についてCは一切を語らないため、Dの父は不明とされている。なお、甲国の国籍法は父母両系血統主義を採用し、乙国の国籍法は出生地主義をとっているので、Dは甲国国籍と乙国国籍とを有する二重国籍者である。

設問1

ABDとの間で、Dとその実方の血族との親族関係が終了するタイプの養子縁組(断絶型養子縁組)をすることを希望している。その成否を判断するにあたり、どの国の法がどのように適用されるか。

設問2

Dの本国法上、断絶型養子縁組にあたっては実親の同意が必要であり、仮に実親が不明(死亡が確認されていれば不明とはされないが、生死不明の場合には不明として扱うとされている)の場合には検察官が同意・不同意をすることとされている。ABDとの間の断絶型養子縁組を日本でする場合、この要件具備のため、不明であるDの父に代わって、日本の検察官が同意すればよいか、それともDの本国法上の検察官の同意をとる必要があるか。

事案の続き:

ABDとの断絶型養子縁組は成立したとする。

その後しばらくして、Aは死亡し、Dは多額の遺産を相続した。Aの死亡から10年後、日本在住の丙国人Eとその11歳の子F(丙国人)が未亡人となったBの前に現れ、先日Aが死亡したことを初めて知ったこと、FAの子であること等告げた。そして、その後直ちに、EFの法定代理人として、FAの子とするため、日本の検察官を被告とする死後認知請求の訴えを提起した。

設問3

日本の民法787条但書によれば、父の死亡から3年を経過したときは認知の請求をすることができないとされているが、丙国法によれば、父の死亡を知ってから1年以内であれば認知請求をすることができるとされており、Fの死後認知請求はAの死亡を知ってから約1カ月後に提起されたものである。この死後認知請求は認められるか。

設問4

設問3の点では死後認知は妨げられないとする。

丙国法上、死後認知請求の場合、死亡した父に嫡出子又は養子がいるときには、その嫡出子・養子全員の同意を得なければ死後認知請求は認められないとされているとする。本件においてDFからの死後認知請求に反対している。この点について、日本の裁判所としてはどのように扱うべきか。

事案の続き:

設問34の死後認知に問題が決着した後(Aの死亡から11年後)Dの実父であると主張する乙国人GB14歳になったDのもとを訪ねてきた。そして、Gは、自分としてはずっと妊娠中に突然家出して行方不明となったCを探していたが、ようやくCを探し出したこと、Cに妊娠していた子はどうなかったかを問い質したところ、ABの養子になっていることを知ったこと、GとしてはDを実子として育てたいこと等を告げた。

設問5

Gの上記の主張を認めるか否かを判断する準拠法はいずれの国の法か。