早稲田大学法科大学院2016年度冬「国際関係私法基礎」試験問題
ルール
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参考文献その他の調査を行うことは自由ですが、他人の見解を求めること及び他人の見解に従うことは禁止します。
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解答作成時間は自由ですが、解答送付期限は、2016年12月11日(日)18:00です。
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解答は下記の要領で作成し、[email protected]宛に、添付ファイルで送付してください(emailアドレス中の_はアンダーバーです)。
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メールの件名は、必ず、「WLS国際関係私法基礎」として下さい(分類のためです)。
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文書の形式は下記の通り。
・ A4サイズの紙を設定すること。
・ 原則として、マイクロソフト社のワードの標準的なページ設定とすること。
・ 頁番号を中央下に付け、最初の行の中央に「WLS国際関係私法基礎」、次の行に右寄せで学生証番号と氏名を記載してください。
・ 10.5ポイント以上の読みやすいフォントを使用し、また、全体として読みやすくレイアウトしてください。
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枚数制限はありません。不必要に長くなく、内容的に十分なものが期待されています。
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判例・学説の引用が必要です。他の人による検証を可能とするように正確な出典が必要です。
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答案の作成上,より詳細な事実関係や外国法の内容が判明していることが必要である場合には、適切に場合分けをして解答を作成してください。
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これは、成績評価のための筆記試験として道垣内担当分(全体の50%分)に該当するものです。
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各設問記載の事実関係は、当該設問においてのみ妥当するものとします。
問題
日本での運送業で莫大な資産を形成した日本人事業家Aは絵画愛好家であり、甲国人の若手画家Bの才能を高く評価していた。Aは、仕事のための出張で甲国を訪問した際、同好の士として以前から交流があった甲国人CがBの絵画αを保有していることを知り、交渉の末、これを5,000ドルで譲り受けた。そして、Aは、日本で建設を計画している美術館での展示を夢見て、それまでの間、絵画の保管に適した状態を維持することができる倉庫を甲国内に有する甲国の画商Dに預けた。そして、なかなかAの美術館建設は実現しないまま3年が経過した。
その間、Bの評価は特に日本で上昇した。そして、資金繰りに困っていたDは、預かっていた絵画αをAに無断で日本に持ち込み、D自身の所有物と偽って日本でのオークションにかけ、乙国在住の乙国人Eが50万ドルでこれを落札した。もっとも、Eには50万ドルの自己資金はなかったため、乙国の銀行Fから30万ドルのローン契約を締結し、落札後、その契約に基づき、直ちに絵画αを乙国に持ち帰り、これを担保目的物としてFに差し入れた。以来、絵画αはFの乙国所在の金庫で保管されている。
以下の設問はそれぞれ独立しており、すべて、日本の裁判官の立場で、法の適用に関する通則法(以下、「通則法」という。答案においても同じ。)、民事訴訟法等に照らして答えなさい。なお、上記のいくつかの契約には準拠法条項も裁判管轄合意条項もない。
(1)
Cは、Bの評価が日本で上昇し始めていたことをAは知っていながらこれをCに告げず、Cから絵画αを安く手に入れたとし、美術館のために絵画を購入したAは事業者であって、甲国法の消費者保護に係る強行法規によれば、Cは絵画αの売買契約の解除権を有すると主張している。この主張の当否を判断する準拠法は何か。
(2)
Aは、Dの絵画αの日本への持ち込み及びEへの売却は、AとDとの間の絵画αの保管契約違反であると主張して、日本で提訴した。この訴えについて日本の裁判所には国際裁判管轄があるか。
(3)
Eの絵画αの落札から6ヶ月後、Aは、E及びFに対して、絵画αの返還請求をした。この返還請求の当否を判断する準拠法は何か。
(4)
Cは、上記(1)の主張に基づき、甲国で絵画αの返還請求訴訟をAに対して提起し、甲国の裁判所はCの請求を全面的に認め、この判決は確定した。この甲国判決の日本での効力を判断するに当たって、民事訴訟法118条1号の要件は満たされているか。